『何で年越しに蕎麦なんですかね?』
只今時刻23:25
隊士の皆に蕎麦を配り終わって、やっと自分が食べる所まで辿り着いた
ズズッと啜りながら、ふと思った事を聞く
『別に何でも良くないですか?一年の締め括りなんて』
最後なら寧ろお寿司とかステーキとか豪華な物の方が私的に嬉しい
「“人生はそばのように細く長く生きる”って意味で食べるって説はよく聞くよね」
隣で蕎麦を食べていたザッキーが言う
『あ、それ聞いたことある』
昔から言いますよね
太く長くって意味でうどんを食べる所もあった気がする
「後はそばが切れやすいことから、“1年の苦労を切り捨てようとして食べる”という説もあるぞ!」
振り向くと夜の見回りから帰って来た近藤さんの姿
『お帰りなさい、…あ、お茶どーぞ』
「ありがとう」
『いーえ』
先にお風呂に入ってから蕎麦を食べるか聞くと、先に食べると言うので
急いでお蕎麦に天ぷらとネギを添えて持って行く
夜の見回りの後は皆小腹が減るから、いつもはオニギリなんかの軽食を用意するけど
今日は蕎麦があるから丁度良かった
『今年一年お疲れ様でした』
「ありがとう」
受け取った近藤さんは、私の好きないつもの笑顔で言ってくれた
23:43
「オイ、どこ行くんだ?」
廊下に出た所でお風呂上がりの土方さんと会った
『除夜の鐘を聞こうと思いまして』
皆の所にいたら、ちょっと騒がしくて鐘の音が聞こえないから抜け出して来たのだ
「風邪引かねェようにしろよ」
『はーい……あ、土方さん!』
そのまま皆の所に行こうとする土方さんを引き止める
「?」
『今年一年お疲れ様でした、来年からはマヨネーズか煙草どっちか控えて下さいね!』
「………出来たらな」
限り無く説得力の無い返事が帰って来る
「お前はもっと落ち着いた奴になれよ」
『どういう意味ですか!?』
「まんまの意味だ」
そう言って今度こそ皆の所に行ってしまった
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