ゴーンゴーン



23:54


自室の前の縁側に座って、目を閉じて静かに鐘の音に耳を傾ける




ゴーンゴーン




今年も後数分で終わる

ふと此処に来てからの事を思い出す


初めは着物の着方も何も分からなかったのに、今は簡単に着れる様になった


買い物だって、迷わずに行ける様になったし、少しだけど友達だって出来た


女中の仕事も今は楽しいし、隊士の皆とも仲良くなった



初めての事ばっかりで最初は大変だったけど、今は馴れてソレも楽しい




『…なのにまだ1年も経って無いのか……』



過ごして来た日々以上に、多くの思い出があり過ぎて不思議な気分だ






ゴーンゴーン




「…何やってんでィ」



『あ、今度は沖田さんだ』



土方さん同様にお風呂上がり姿の沖田さんは、やっぱり見た目だけ爽やかだ



『相変わらず見た目おんりーの爽やか君ですね』



「見た目も中身もブタのお前よりマシでさァ」



『中身もって酷く無いですか!?』



見た目は仕方ないとして中身もって、最早ただの豚じゃないですか



此処に来て色んな事が出来るようになったけど、未だに一度も沖田さんに口で勝てた試しがない




「で?」


『へ?』



何が突然、で?なんだと思ったら、此処で何をしてるのかと言う事だった



『除夜の鐘を聞いてたんですよ』



「へー…」




いつもならそのまま自室に帰るのに、今日は珍しくそのまま横に座った




『髪…乾かさないと風邪引きますよ?』



「平気でィ」







ゴーンゴーン




特に喋る訳でも無く、黙って2人で鐘の音に耳を傾ける



そう言えば、地味に2人でこうやって縁側に居るのが多い気がする



気にして無かったけど、改めて考えると変な気持ちだ



此処に来てから本当に色んな事が自分の中で変わったと思う




今までだったら友達を誘って一緒に騒いで、こんな風に過ごす事も無かったけど


今日みたいに過ごすのも悪く無い







「あ、咲夜ちゃんと沖田さんもこんな所にいた!局長がカウントダウンするから早く来いって言ってるよ」



時計を見ると今年もあと30秒を切っていた



直ぐに行くと返事をして立ち上がる



『沖田さんも早く行きましょう』


「おー…」




20、19、18…



余り急ぐ様子も無く、ゆっくり歩き出す



なんとなく私もそれに合わせて進む




17、16、15、14、13、……





外からも屯所の中からもカウントダウンの声が聞こえる




12、11、10、9、8、



「咲夜、」



急に呼ばれて立ち止まる



『何ですか?』




7、6、5、



「…あー、」



何かを言をうとして、目を逸らす



4、3、2、



『?』



1、



ハッピーニューイヤァー!



外からも中からも声が響く




「あー…あけおめ」



そんな周りの声とは違う、いつものトーンのまま沖田さんが言った



『あけおめ、です!』



言うなりまた歩き出した沖田さんの後に付いて行く










(…え、結局何だったんですか?)



(何でも無ェ)



(えー…)





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明けましておめでとうございます(^^)








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