恐ろしく冷たい瞳だった。
その目に情けや慈悲はなく、ただ灰色の光を揺らしているだけだった。
忘れるはずがない。
今でも鮮明に憶えている。
それは、月の綺麗な夜だった。
辺りは薔薇の花弁のように血が飛び散り、部屋の中央には私の父が変わり果てた血塗れの姿で倒れていた。
父が殺される様を幼い私は机の影から息を潜めて見ていた。
『あーあ。……血がついちゃった』
父を殺した犯人は服に付着した父の血を汚いモノを見るような目で見ると、何事もなかったかのように部屋を出ていった。
犯人が出ていったのを確認すると、父のもとへ駆け寄り泣きじゃくった。
「父さん、父さん……っ!」
けれど、父は既にこと切れていた。
(どうして……どうして父さんが……)
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