アズーロの元でフェッロファミリーに入った時、房中術はそれなりに仕込まれたつもりだった。
だけどそんな小手先のテクニックは、想い人の前では何の意味も為さないことを知った。






「ま、待って伯爵!もうこれ以上は……」


ベッドの主の胸を押し退けようとすると、その手を絡め取られ組み敷かれる。



『なに言ってんの?コレくらいでへばってちゃ困るんだけど』

「でも、もう3回も……」




どうやら武官としての彼の体力を侮っていたらしい。



あれから三日三晩、同じベッドで彼に愛され続けた。
バスルームは隣にあるし、食事は使用人達に部屋の前まで運ばせれば何の支障もなかった。


(本当はこんなコト、してる場合じゃないのに……)



検診に来たお医者様も、お見舞いの来客にも断りをいれて、全ての予定が我儘な当主によってキャンセルされた。

まるで世界から隔絶されたこの部屋で、ただひたすら互いの熱に溺れていた。




『ね、最後だからもう少し頑張って?』


耳元に甘い声で囁かれれば、思わず抗う手の力が抜けていく。


(ずるい。そんな言い方されたら……)


弱まった抵抗を了承と受け取ると、グレイは引き気味な名前の腰を掴み、自身を沈めていった。


「あぅ……っ!」


強引に紡がれる快楽に眉を寄せ、夢中でシーツをつかむ。

まるでケモノだ。彼の硬い熱で貫かれれば、その身はとろとろに溶かされていく。頭がヘンになりそうだ。
この3日間で、チャールズ・グレイに自分の全てを明け透けに暴かれてしまった気分にさせられる。


(この男にとって私の知らない部分なんて、もうないんじゃないだろうか……)


ナカを彼でいっぱいに満たされれば、もう何も考えられない。このまま溶けて、混ざって、ひとつになってしまいたい……。





名前の手の甲に重ねられたグレイの手の力がグッと強くなったかと思うと、4度目の熱が放たれた。


彼の切なげな吐息が耳に触れ、くたりと倒れ込む重みを背中に感じた。






***




『終わるとすぐ寝るんだね、君って』








微睡みの中で唐突に声をかけられ、シーツの波間でゆっくりと瞼を開く。


「……他のコは違うんですか?」


強引に起こされた形になり、その口調は少々棘を帯びてしまう。
そもそも誰のせいでこんなに寝不足だというのか。


すると彼は、少しだけ黙ったあとに小さく笑った。


『さぁね。野暮なこと言わないでよ』




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