グレイの言葉に名前は一瞬目を丸くしたかと思うと、間をおいて吹き出した。





「あははっ、男だなんて!何を言ってるんですか、マイケルはまだ9才の子供ですよ」








お気楽に笑う彼女を尻目に、グレイは小さな使用人の眼差しを脳裏に浮かべた。




マイケル本人はまだ自覚がないだろうが、彼は真っ直ぐな男の目をしていた。

名前のためには当主であるグレイに噛み付く直向きさと根性を持ち合わせている。




子供といってもあと5年もすれば脅威になりかねないと密かに思った。










『ハァ……まぁ君は鈍そうだしね』





ポツリとつぶやくと名前は聞こえなかったのか、首を傾げて聞き返した。






「何か言いました?」



『なんでもないっ。ほら、次の展示みにいこっ』

 









グレイが指差したのは、この水族館で最も大きな水槽らしく、たくさんの回遊魚たちが鱗を輝かせながら水槽の中を彩っていた。









「綺麗……本物の海の中もこんな感じなんですかね」











ふと、アンデルセン童話の人魚姫のことが頭をよぎった。



もし、海の底がこんなにも美しいのなら、なぜこの世界を捨ててまで彼女は陸に上がろうと思ったのだろうか。






彼女にとって、陸上の世界はそれほどまでに魅力的だったのだろうか……












『さァね。ただ、君が気に入ってくれたなら、ここまで連れてきた甲斐があるよ』



「……はい。私、今日は来れてよかったです。連れて来てくださってありがとうございます」









名前は穏やかに微笑むと、水槽の水の煌めきをいつまでも見つめていた。

















右手はいまだに繋がれたままだった。



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