白でも
黒でも
透明でもない。
…けれど、温かい。
そんな世界で、
あの夢の中の小さな天使と再会した。
「……また会ったね」
私の言葉には応えず、美しい銀色の髪を靡かせた天使はふわりと笑って、私に駆け寄り、甘えるように抱きついた。
「チャールズがサラの夫を殺した晩……私にそれを報せるために、会いに来てくれたのね?」
私は腕の中の幼い天使の髪をかきあげながら訊ねた。
そして、オールコック夫人に問い詰められた時も……
私の意識を無理やり遮断して、その夢の中に会いに来てくれた。
私はこの天使に二度も助けられた。
「ありがとう」
そう言った瞬間、腕の中の天使と目があった。
その瞳には、吸い込まれそうなほど美しい……見覚えのある銀灰色の光が輝いていた。
「あぁ……あなたが誰だかやっとわかったわ。
あなたは、私の」
……………───────
『名前!名前……っ!』
目を覚ますと、白い天井と
濡れた銀灰色の瞳があった。
『あーよかった!気がついたんだね。
そこの君、早く先生を呼んできて』
「ん……チャ……ルズ?」
珍しく彼が切羽詰まったような声をあげ、看護師さんがパタパタと部屋を出ていくのが分かった。
どうやら、あの後 意識を失った私は病院に運ばれたようだ。
(エリザベスの誕生日パーティーだったのに、騒ぎを起こしてしまって申し訳ないな……)
朦朧とした頭で、ぼんやりとそんなこと考えているとチャールズが本当に心配そうな表情でずいっと顔を覗き込んできた。
『名前、ボクがわかる?
どこも痛いとこない?』
彼のこんなに余裕のない表情は始めてみた。
私は思わず彼の頬に手を伸ばす。
「私は、大丈夫。
チャールズ……お仕事は?」
"仕事"という単語にチャールズはピクリと眉を寄せた。
『ハァ!?君、こんなになってんのにナニ言ってんの?』
(ガチャ)
「グレイ伯爵夫人、具合は如何でしょうか?」
チャールズが大声をあげると、白衣を着た年老いた男性がノックとともに現れた。
『先生、名前は大丈夫なんでしょうか?』
チャールズが訊ねると医師と思われる男性は私の前に屈んで脈を計り、いくつか質問をした後、チャールズに向き直り笑顔を浮かべた。
「問題ありません。
おめでとうございますグレイ伯爵。奥様はご懐妊です」
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