「関係ないですって?!私はあなたが彼と結婚する前から彼を愛していたのに、それをぽっと出の許嫁なんかに奪われて冗談じゃないわ!」
「祝いの場です。大きな声を出さないでくださ……」
男爵夫人が声を張り上げて詰め寄った瞬間……
私の身体中をなんとも言えない感覚が駆け巡った。
「うっ……げほっげほっ」
あまりの不快感に座り込んでしまい、大理石の床の上に吐き出してしまった。
キャァァァァア……!
突然の出来事に広間はざわつき、オールコック夫人も唖然としていた。
「どうした?!大丈夫か!」
騒ぎを聞きつけ、ミッドフォード侯爵夫人が駆けつけてくれたところで、私の意識は手放されてしまった。
***
「今日も帰らないのか」
チャールズ・グレイの相棒フィップスがそう言うとグレイは声を荒げた。
『うるさいな!家に帰ろうが宮殿で残業しようがボクの勝手でしょ?!』
「しかし、家をあけて2週間以上になる。そろそろ帰らないと彼女も心配するだろう」
『……わかってるよ!』
そう吐き捨てると、ふてくされたようにフィップスに背を向けた。
(だけど、帰ったところで名前に合わせる顔がない……)
親友の夫を殺したなんて、きっと名前はボクを軽蔑してるに違いない。
今までのような関係には一生戻れないかも……
バァァァァン!!!「グレイ伯爵!大変です!!」
そんな時、珍しく息を荒げたジョンが扉を乱暴にこじ開け入ってきた。
その姿にフィップスは顔を顰める。
「なんだジョン。入る時くらいノックを……」
「名前様がミッドフォード侯爵邸で倒れられました」
「『!!』」
フィップスは眉を寄せ、グレイは口に運ぼうとしていたサンドウィッチを持つ手を止めた。
まさか……
(名前が……何故?)
ジョンは荒い息を整えながら続ける。
「現在、ロンドン王立病院に搬送されています。陛下の許可は得ております。馬車の準備が調いましたので、ご支度を。グレイ伯爵」
「譲れない、どうしても」
続く??
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