”君がこの学校のイチバンなんだ?”
国語のテストで学年1位をとったら、イギリスから転校してきた留学生のグレイに声をかけられた。
日本語を教えてほしいと、無理矢理 図書室に連行されたのが1年前。
それ以来 名前は古典と現代文を、グレイは英語をお互い教え合うのが放課後の2人の日課になっていた。
『あーもう日本語ってワケ分かんない。』
「英語の方が意味わかんないよ…」
両手を頭の後ろに組んで項垂れるグレイに対して毒づいた。
『ハァー?何いってんの。英語さえできない君がバカなんだよ。』
「誰が馬鹿よ?!」
けれど、グレイはこの1年で本当に日本語が流暢になった。
当初はカタコトだったのが今では信じられないくらいだ。
『そもそも何で日本語って、たった400年程前の文章と現代の文章が全く違うわけ?英語だとアリエナイよ。
コレとかなんて読むのさ?ギョクキョウ?』
グレイが指差した先には教科書に”玉響”と書かれていた。
「タマユラだよ。”一瞬”とか”ほんの少しの間”っていう意味。」
そう答えるとグレイは芋虫を噛み潰したような、納得のいかないといった顔をしていた。
「ほら!はやく課題終わらせないと、購買人気ナンバーワンのこのアイス入りドーナツはお預けだよ!」
目の前でビニール袋に入ったパンを挑発するようにフリフリと揺さぶると、グレイは背筋をピンと伸ばして再度机に向かった。
ペン回しを始めて遊び始めたり、こうしてヤル気のなくなった彼をお菓子で釣って、無理矢理意欲を起こさせるのはいつものことだ。
← →
ページ数[1/3]