変わらないで
変わらないで
変わらないで








どうか、いつまでも私の知る貴方でいてよ……。











***







「坊っちゃん……これは一体なんのつもりですか?」











壁に押しやり、逃げ場をなくすように両手で囲む。




口元に弧を描いて坊っちゃんは言った。








『とぼけちゃって』






フッと笑うと、坊っちゃんは耳元にねっとりとした舌を這わせる。





「…ッ!!」



『ホントーはこれから、何されるか……分かってるクセに』















グレイ家といえば、この英国では名家中の名家。



そんな家に十数年前、私は生まれたばかりのグレイ家の子息の乳母(ナニー)として奉公にやってきた。








お仕事が忙しいご両親に一日1時間程しか会えず、いつも孤独だった坊っちゃんを憐れに思い、彼の母親代わりとしていままでお傍でお仕えしてきた。





おこがましいけれど坊っちゃんを実の息子のように思って育ててきた。







…だからこそ、この現実が受け入れられない。













「……っやめて下さい!!坊っちゃんは……」








振り払おうとすると坊っちゃんは少しムッとして言った。




『もう、坊っちゃんなんて呼ばれる歳じゃないんだケド?』







灰色の瞳が私を捕らえる。

それがなんだか知らない人のようで、思わず目をそらしてしまった。








「どんなになっても……坊っちゃんは私の中では坊っちゃんです」




『……ふーん?』








瞬間、彼の瞳が怪しく光ったかと思うと坊っちゃんは私の唇を塞ぐ。











『その言葉……後悔させてあげる』




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