「はぁー、なんで私に彼氏ができないんだろう!?」








向かいに座る名前はうなだれて悪態をついた。










「ねーフィップスなんでだと思う!?
私の何がいけないの?」




「知らん」










夜中。残った仕事をしていると、夜会帰りの名前が近くを通ったついでだと言って立ち寄って来た。








かなり酔ってるようで、部屋に入っただけで酒臭く、言動もおかしかった。







「私も早く彼氏がほしい!

もうそろそろ、友達や母様に言い訳するのも難しくなってきたし!」




「この前、レイ子爵とハマースレイ社の御曹司バーナード・ブラックに誘われたと言ってたじゃないか」




「知らない!


何でか、次の日2人から君とは付き合っていけないって手紙が来たの!!」









どうやらこの話は地雷だったらしい。



名前の機嫌はさらに悪くなった。











……それにしても、


何故 彼女に恋人ができないのか俺にも分からなかった。










容姿も家柄も申し分ないし、


社交性もそれなりに身につけていた。










問題があるとすれば………性格か?









「グレイとフィップスはいいよねっ!

顔がいいし、エリートだから女の子の方から寄ってくるもんね?!」










遂には、俺たちへの八つ当たりまで始まった。








「俺たちは陛下のお世話で日々忙しい。そんなものを作っている暇はない」






「へー、じゃあ彼女いないんだ?

いっそのこと私たち付き合っちゃう?」




「………」




「………」









名前の思わぬ発言にフィップスが固まっていると、間をおいて彼女の笑い声が聞こえた。










「なーんてね!」


















(心臓に悪い……)









ゲラゲラ笑う彼女をフィップスは呆れた目で見つめる。








「……仕事の邪魔だ。

馬車を用意してやるから、そろそろ帰れ」





「なによー、フィップスのケチん坊ー」









フィップスがしっしっと追い払うと名前は覚束ない足で部屋を出ていった。



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