――キレイな手だ
と思った。
「グレイ伯爵、
ダンスのお相手をお願いしたいのですが」
ハンティントン侯爵令嬢が控えめに頬を赤く染めて申し出た。
彼女は確か、今日が初の社交界デビューのハズ。
普段のボクなら
絶対、断ってるけど
レディに恥をかかせてはいけないという、
陛下のお言い付け通り、この申し出を受け入れることにした。
『いーですよ』
そう言って受け取った彼女の手はとても白くてふわりとしていた。
当たり前か、
よほど貧乏な家柄でもない限り、貴族の娘が家事をすることなんてありえないんだから。
(どーりで綺麗なワケか…)
そう心の中で呟いて、令嬢の手の甲にキスを落とす。
***
「珍しいですね。
旦那様が女の子のダンスの申し出を受け入れるなんて」
夜会から帰るなり、メイドの名前がベッドサイドでホットココアを注ぎながら言った。
『なァに?もしかして妬いてんの??』
「な…っ、妬いてません!!」
そう言うと、名前は今日のハンティントン令嬢より赤くなるから面白い。← → ページ数[1/2]
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