『名前、


こっち来て』






「え?」










ベッドに座っていたボクは困惑する名前の腕を引き、自分の膝の上に座らせる。








「え?ちょっ…!

旦那様!?」








戸惑う名前の頬に手を添え、

彼女の髪をかきあげる。










「ダメです…旦那様。


こんなとこ、他のメイドに見られたら…」






小さく抗う名前の顎を掴み柔らかい唇に自らの唇を押しあてる。





「……っ」


『これでボクら、共犯だね』










そっと唇を離すと名前はトロンとした瞳をしていた。







『君の手、凄く綺麗…』







名前の手に自分の手を重ねてそう言うと、彼女はさっと手を引っ込めた。







「そんな…お世辞が過ぎます」








確かに名前の手は夜会で逢った貴族の令嬢の手に比べたら、
家事をするから乾燥してるし、手入れだってされてない。








『それでも、キレイだよ』











人を殺めることしか出来ない

冷たいボクの手に比べたら。

























「冷たい左手」
end.



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