「名前!見て見て!!グレイ伯爵よ!
はぁ〜…今日も素敵だわー」
悩ましげな溜め息を吐いた友の視線の先には、
美しいシルバーブロンドの髪をなびかせたグレイ伯爵の姿があった。
彼は名門貴族たちと優雅に談笑し、
それが一層 周りの注目を集めていた。
「ね!名前も格好いいと思うでしょ!?」
「ん…そうね、」
突然 同意を求められ、なんとか出たのは曖昧な返事だった。
親友のセアラはグレイ伯爵に夢中だ。
成る程、彼女が夜会に誘ってくるなんて珍しいこともあるもんだと思ったら、彼が出席するからか。
確かにグレイ伯爵は綺麗な顔立ちをしてると思うし、おまけにかなりの名門貴族。
英国中のレディ達が放っておくハズがない。
でも、彼はあまり良い人ではないような気がする。
この間なんか、レディ達から貰ったバレンタインの贈り物をチョコだけ食べて、
熱い告白が記されたカードを何の躊躇いもなくごみ箱に捨てるのを目撃してしまったし。
…少なくとも、親友にオススメできるような人ではないのは確かだ。← → ページ数[1/2]
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