幼馴染との習慣








とりあえず急いで着替えて部屋に入ると
テーブルであぐらをかいて待っている清十郎くんがいた。

お母さんが出した手作りのケーキと湯気の出た紅茶が二人分あった。
…また余計な気を回したな、あの人は。



「清十郎くん、いらっしゃい。」

「なまえ、すまない。こんな時間に」

「ううん、いいんだよ。なんかお母さんも引き止めちゃったみたいだし。」



そういうといや、気遣ってくれて有難い。とお世辞でもなんでもない素直な言葉をいう清十郎くん。
ウチのお母さんをこんな風に言ってくれるのは世界でもお父さんと清十郎くんだけだと思う。
それを証拠にカロリー摂取に厳しい清十郎くんはお母さんのケーキはちゃんと食べる。
無理しなくていいって言ったら運動を増やせばいい。と単純な解決法を差し出されたのでもう気にしないことにしたのは昔の話。



「そういえば今日はどうしたの?」

「む…これを返そうと思ってな。」

「…お弁当箱?…あー前の試合のときのね?こんなのいつでもいいのに。」

「そういうわけにはいかん。次の試合はもうすぐだからな。」



そう言いながらキレイに洗われた弁当箱を渡された。

実は清十郎くんが試合の時はわたしの作った弁当を渡している。
たぶん清十郎くんがアメフト部に入って初めての試合で応援がてらわたしが弁当を作ったのがきっかけ。
その時もこうやって弁当箱を綺麗洗って返されたときに『じゃあ次回も作るね!』とか言ったからか
この習慣が高校生になった今でも定着してしまったようだ。



「じゃあ次回も腕によりをかけて作らせてもらうね!」

「あぁ、頼む。」



清十郎くんは『美味かった』とか『これが好き』とか何も言わないけど
いつもなにひとつ残さずキレイにたいらげてくれる。

それだけで充分作り甲斐はあるからこうやって次回の約束だけを取り付けるのだった。



「用は済んだ…帰る。」

「うん。あ!お母さんがご飯はどうする、って。」

「…すまんが、今日はまだトレーニングが残っている。」

「それがいいよ。お母さん清十郎くんにめちゃくちゃ食べさせるから申し訳ないもん。」

「…美希さんの好意は迷惑ではない。」



そうは言ってくれるが美希さんもといお母さんは料理が趣味で人に食べてもらうのが好きなのはいいんだけど何より容赦がない。
お父さんも結婚してかなり太らせたって自慢げに言っていたのを思い出した。

それに清十郎くんまでが巻き込まれてしまうのはヤバイ。
まぁカロリー摂取に徹底してる清十郎くんのことだからそれは心配ないと思うが。

それよりもトレーニングが残っている清十郎くんを引き止めていることを思い出し
急いで玄関まで送る用意をした。







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