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「行くぞ、ナマエ」
「もちろんよ、ルフィ君。ケイミーちゃんは何が何でも助けるわ」

トビウオに乗りながらルフィ君とヒューマンショップへ向かっている。
何故こうなったのか。
今更ながらに遊園地に行ったことを後悔してしまった。ケイミーちゃんが遊園地に行くのが夢だってあまりにも嬉しそうにしていたから油断してた。

「あれだな!」

ルフィ君の言葉に顔を上げて青ざめた。

待って。待て待て待て!突っ込む気かい!!

私も、飛び乗ってきたゾロ君も乗っていたトビウオは見事にヒューマンショップの屋根を突き破って侵入し、私の体を抱えてくれていたゾロ君にお礼を言って降ろしてもらった。

顔を上げてケイミーちゃんの姿が見えた瞬間に身体中の血液が沸騰したんじゃないかというぐらい憤慨した。
首輪をつけられて、鎖で繋がれて、水槽の中に入っている姿。

周りを見渡せばまるで芝居を見ているかのような会場の作りと、観客だ。
握りこぶしをつくり、ケイミーちゃんの方へいこうとするとゾロ君に腕を掴まれて、私の横をルフィ君が嬉しそうに駆け抜けて行った。

「ケイミー!探したぞ!!良かったー」

そのルフィ君の体を慌てて走り寄ったハチさんが抑えつける。
そして、立ち上がって騒ぎ始めた人物を見て私は息を飲んだ。

あれは、天竜人だ…。

小さい頃から両親に言われてきた。何があっても天竜人とは関わるな。頭を上げるな。目立つなと。

ハチさんの姿を見た瞬間に周囲の観客が騒ぎ出す。魚人だ気持ち悪いなど、聞いてて腹の立つ発言ばかりだ。
事前に差別のことは聞かされていたけど、いざ目の前でされているのを目の当たりにすると更に怒りが沸き起こる。

ドンっと大きな銃声で、ハチさんの体がゆっくりと倒れていく。
その一部始終を見ていた私は、少し弱まったゾロ君の腕を振り払いハチさんの元へ駆け出した。

再び撃とうとする天竜人の前に立ちはだかると、ルフィ君が私の前に立ち塞がってくれたので、すぐにハチさんの体を診察する。

銃弾は抜けてる。ということは、止血のために皮膚だけでも能力を使えばいい。
集中してから、ケアと呟くと緑の光でハチさんの傷を撫でる。

「ニュー…、ナマエありがとう」
「内臓は治ってないんだから動いちゃ」

ダメだよ。と言い切る前に目の前のハチさんが消えて、私の視界が暗くなった。
いや、消えたんじゃない。私の視界が変わったんだ。

「てめェ、誰の指示で能力使ってんだ」
「きゃ、ぷ、てん…」

懐かしい匂いがする。大好きな温もりを感じられる。
私の体はきつく抱きしめられていて、私もその体を力いっぱいに抱きしめた。

はっ!こんな感動の再会をしている場合じゃない!
すぐにハチさんの元へ戻ろうにもキャプテンの抱きしめる腕に力が入り、全く動けなくなった。

「なぜ麦わら屋一味と一緒に居るのか…他にもてめェには言いたい事が山ほどあるが、説教は全部後だ。シャチ、ペンギン、コイツにリードでもつけておけ」
「アイアイ!」
「ちょっ」

キャプテンから体を離されて、シャチとペンギンさんが片手ずつ、私の腕を掴んだ。
騒ぎ声が大きくなった。ルフィ君がまさかの…天竜人をぶん殴ったからだ。
ケイミーちゃんもまだ救えてないし、私が「離して!」と言ってもペンギンさんもシャチも全く離す気配はない。

ルフィ君の仲間たちが次々とスタッフを倒していき、海軍大将がやってくると慌ただしく動いている。
せっかく助けてもらったのに、私はここでのんびりと仲間と座っている場合ではないのに。歯がゆくて出血するのもお構いなしに唇を噛みしめた。

「海軍ならもう来てるぞ、麦わら屋」

キャプテンの声がルフィ君の耳に届いたのか、こちらを向いた。

「何だお前。………何だそのクマ」

キャプテンとルフィのやり取りを目の前でそわそわと聞いていたけど、ルフィ君の目が私に合うと突然声を荒げた。

「お前!ナマエになにすんだ!」
「……どういうわけか知らねェが…うちのクルーが世話になったらしいな」
「???」
「トラファルガー・ローね…あなた…。ルフィ、彼がナマエちゃんの船長よ」

ロビンさんが私のことを見て、キャプテンの説明をしたらルフィ君は納得したように私からキャプテンの方に視線を戻した。

「クマもか?」

ルフィ君、ベポに興味深々すぎるよ。
私はサンジ君の「ケイミーちゃんが!」という言葉にすぐに舞台のほうに目をやった。
ケイミーちゃんの方へ銃を構えている天竜人が、いきなり倒れ始めた。

何が起きたのか分からないが、奥から巨人と高齢者が出てきて何かを話し始め、状況を把握した高齢者がこちらを見た瞬間に意識が遠のいた。












目覚めた時にはベポに抱えられていつの間にか外に出ていた。

「あ、れ…?」
「あ、ナマエ気が付いた?」
「ベポ…ケイミーちゃんは?!」
「人魚ならもう助けて麦わらたちと一緒に居るよ」

降ろしてもらうと、シャチとペンギンさんが笑いながら「あーあー、暴れちゃって」と楽しそうに戦いを見ていた。
私もその方を見れば、一人の赤い髪の人は知らないがルフィ君が小さくなっていて、キャプテンと三人で海軍を相手にしていた。というより、戦闘はひと段落したのか、何やらめちゃくちゃになっている。

三人で何かを話し終わったと思えば、キャプテンが海軍たちに背中を向けてベポを呼んだ。
ベポが海軍を相手にし出すと、キャプテンは真っ直ぐに天竜人の奴隷のもとへ行く。

「おれと来るか?海賊キャプテンジャンバール」

大きな奴隷が嬉しそうに笑った。

「そう呼ばれるのは久しぶりだ。天竜人から解放されるなら喜んでお前の部下になろう」
「半分は麦わら屋に感謝しな」

能力を発動させて手錠や首輪を外すと、ジャンバールさんが嬉しそうにキャプテンの周りに襲いかかろうとする海軍を投げ飛ばした。
キャプテンが今度は私の方へ一直線に来て、無言で私の体を持ち上げ、肩に担いだ。

「行くぞ」
「っ!ちょっ。ルフィ君!!みんな!本当にありがとう!!」

大きな声でそう叫べば、一味全員が私の方を向いて笑顔で手を振ってくれた。
私もブンブンと手を振って、走り出したキャプテンの肩にお腹を圧迫されながら苦し紛れに「ぐえっ」と言った。
毎回思うけれども腹部を圧迫するこの姿勢、本当は苦しい。

「私走れますよ!キャプテン、降ろしてください!」
「黙って担がれてろ。急げベポ!」
「アイアイ!」

肩に担がれているおかげでキャプテンの背後の戦況が良く見える。
ベポと新しいクルーのジャンバールさんが後ろの橋を壊して、海軍の足止めをしているのが見えた。

「キャプテンあれ!」
「…ユースタス屋と……アレは!」

担がれているせいで何も見えない。
視界がいきなりかわって、私はベポの前にお尻から地面に落ちた。

「いたっ!」
「あれ?ナマエ!」

すぐに立ち上がり、すごい衝撃をキャプテンが避けた後に私の体が光り始めた。
キャプテンのROOMだ。

赤い髪の人と一緒にキャプテンが大きい人と対峙している。

「バーソロミュー・くま!」

どうやら赤い髪の方も船長らしい。
恐ろしい外見の人たちが船長と呼んでいるのが聞こえてきた。

海軍もちょろちょろとやってきて、ベポ達と一緒に私も体術を使って戦闘を開始した。
何人倒そうがきりがないぐらいに続々と新手の海軍がやってくるし、自分の刀がないのが歯がゆい。ずっと船長室に置きっぱなしだ。

キャプテンのROOMから出ないように行動しているため、思うように攻撃も出来ない。

「“アネスシージャ”(麻酔)」

手元に粉が現れて海軍の方へと振りまいた。
バタバタと倒れていくのを赤い髪の船長の船員が見て「うお!」っと声を上げた。

「あれは5000万の首!ミョウジ・ナマエだ!」

やば。
海軍が完全に私にロックオンしてきたため、集中して私の方へ寄ってきた。
再び先ほどと同じ様に粉を能力で出しては振りかけて眠らせていくと、ぐらっと眩暈を感じた。

考えてみれば、一度死にかけたし、ここ数日の間は寝たきり状態であったし、体力も落ちているのだろう。どうやらこの能力はかなりの体力を消耗するらしい。

ああ…せっかく体力がついてきたと思ったのに。
また鍛えなおさなければ。

頭を振って眩暈をなんとかしようと思ったが、どうにもならないらしい。

「無茶しすぎだ馬鹿」
「…」

どうやら戦闘が終わったらしいキャプテンが私の肩を抱いて、目の前の海軍を切り刻んだ。

「全員、船に帰るぞ!」

アイアイ!と大きな声が聞こえて、私はベポに横抱きにして抱き上げられた。

「ありがとう、ベポ…」
「ううん!おかえり、ナマエ!」
「っ!ただいま!ベポ!!」

かなりの距離を走った後にキャプテンがROOMを展開し、視界が変わった。
ドサッと尻もちをして、顔を上げるとみんなの顔が私に集まった。

「た、ただいま」
「おかえり!ナマエ!!!」

全員の声が重なって、みんなにもみくちゃに抱きしめられた。
顔面をイッカクの胸で埋められて、カイ君までも泣きそうな顔して私の手を握っている。

「潜水する。さっさと中に入るぞ」

キャプテンの低く、機嫌の悪そうな声が聞こえてきた。
首根っこを掴まれて全員の輪の中から無理やり抜き出された私は、そのままずるずると引きずられるようにして船内に連れて行かれた。






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