金色の女神 番外編
実験  [ 13/17 ]



宝条に呼び出された。
そして入った途端に何かをかけられた。
無視すればよかったと後悔してももう遅い。

「ねえ、どういうこと」
「実験が成功した」
「は?」
「ほら、鏡だ鏡。お前は透明になった」
「っ!うぎゃああああ!!!」
「安心しろ効力は3時間だ」
「クソ宝条!セフィロスにいいつけてやるー!!」
「クックックッ」
「っ!いやああああああ!!」



走って変態科学者どもの居る実験室を後にする。
とりあえず向かうはセフィロス達が居る執務室。

ドアが開いており、中に入るとちょうどセフィロス、ジェネシス、アンジールが居る。

「それでアンジールはどうしたんだ?」
「こいつ顔赤くしてて」
「ジェネシス。これ以上言ったらお前がこの前したことセフィロスに言うぞ」
「何だ」

ジェネシスが口を閉じるとアンジールは笑う。
名前はおもしろそうだと小さく笑い、そのままセフィロス達の話しを聞く。

「そういえば名前は?」
「タークスのとこに居る」
「次の任務はあっちにとられないようにさっさとソルジャー任務いれろよ」
「それができてたらとっくにやってる」
「そういえば…この前にあいつと戦闘したんだが」
「名前とアンジールで?ずいぶんと珍しいな」
「あいつまた強くなったな」
「当り前だろ」「お前が言うなジェネシス」

嬉しそうに言うジェネシスにセフィロスが睨む。

「戦う姿はまさに女神が舞うかのように…金色の美しい髪を靡かせて…」
「…俺もよく相手をさせられる」
「何でセフィロスばっかり。あいつ…俺との戦闘は避けてるのにな」
「お前が下心丸出しでやろうとするからだろ」
「セフィロスも人のこと言えないだろ?この前訓練室でキスしてたろ」
「あいつが誘うから」
「盛ってんなよ」
「だからお前に言われたくない」
「お前達いつまで名前を取り合うんだ」

アンジールの呆れた溜息に名前は同情した。
しかし、この三人の会話の盗聴が楽しくてそのまま気配を殺したまま聞き耳をたてた。
その中でピリリリと電子音、携帯が鳴り響く。

「…」
「セフィロス、携帯鳴ってるぞ」

画面を一目見てすぐにしまうセフィロスにアンジールが問いかける。

「誰なんだ」
「宝条」

無視を決め込むセフィロスの腰に腕を回す。

「…?」

顔を顰め、机に寄り掛かっていたのを少し体を動かした。
ポケットにわずかな隙間が出来るのを確認すると、名前は素早く携帯の通話ボタンを押した。

『もしも』

ぶつっと直ぐに通話を切り、不機嫌そうにあたりを見回した。

「…」
「どうしたんだ、セフィロス」

ジェネシスの不思議そうに見てくる目と合う。
まあ、向こうは私のことを見えていないが。
名前は今度はセフィロスにそっと抱きつく。

「…?」

セフィロスは腰に巻きついているだろう手らしき感覚を掴む。

(げっ)

「…名前?」
「お前何言ってるの?」

ジェネシスが首を傾げ近づいてくる。
どうやらアンジールはセフィロスの身体に巻きつく名前らしきものを見ている。

セフィロスの唇に人差し指を当てて、ジェネシスの方へ行く。

(日頃の恨み…くらえ!)

ジェネシスの腹部めがけて思いっきり拳を上げる。
その拳はきっちりみぞおちに入り、ジェネシスはその場に膝をつく。

「ぐううっ…セフィロスお前…とうとう不思議な力を手に入れたのか…」
「俺は何もしてない」

ニヤニヤと笑いながらセフィロスはジェネシスを見下す。
そんなセフィロスをジェネシスは睨む。

「俺は何もしてないって何度言えばわかる」

ジェネシスは黙って立ち上がり目を瞑る。

「もう一発来い」

セフィロスに向けてジェネシスは言っている。
名前はニヤニヤと笑い、再び突っ込む。
しかし、ジェネシスは見えないはずのレミの腕を掴み腰を掴まれる。
そしてそのまま密着させられる。

「あんた…すごいわ…今はじめて尊敬した」
「褒めてくれてありがとう、名前」
「ジェネシス、名前を離せ。こっちに来い」

ジェネシスは腕に力を入れ、ぎゅっと抱きしめてくる。

「ちょっと?」
「見えないけどこの抱き心地は名前だな」
「ジェネシス離してやれ」

アンジールの言葉を無視して、私を抱きしめたまま机に腰掛ける。

「名前、何でこんなことになったんだ?」
「おい。話しをする前にそいつを離せって言ってるだろ」
「セフィロス。これは名前じゃない」
「名前じゃなきゃお前を殴ることなんてできないだろ」
「で、何があった」

名前は諦めて宝条の研究室であったことを3人に話した。
話した途端に3人揃って溜息をつく。
こういう時は本当に息ぴったりだなと心の奥底から思った。

「お前、宝条のところには1人で行くなっていっただろう」
「ごめん、セフィロス」
「セフィロスじゃなくて俺だってアンジールだって居るんだ、言えよ」
「ありがと、ジェネシス」
「二人は後処理が面倒だろ。せめて俺には言っていけ」
「さっすがアンジール。確かにアンジールには言っていけばよかったなあ」

名前は3人にくすぐったい気持ちで笑う。
こんなに心配してくれるイケメン達、私ってなんて幸せ者なんだろ。

「いやー、私って贅沢ものだわー」
「そうだな、俺にこんな抱きしめられるのもレアなんだぞ」
「セフィロスに抱きしめられた方がレアだわ」
「…俺と一緒に居るのに他の男の名前を出すなんてな」
「ちょっとまるで恋人みたいな発言やめてくれる?」

名前とジェネシスのやりとりにしびれを切らしたセフィロスはジェネシスを睨む。

「名前を離せって言っただろ」
「そうそう。お腹すいたんだから食堂行こうよ」
「その姿で?」
「うん、だって3時間はこのままみたいだから」
「ふーん」

そう言っているものの、ジェネシスは腕に力を込める。
セフィロスがジェネシスの方に手を伸ばす。

「名前来い」

伸びてきたセフィロスの手をしっかり掴み、掴まれた感覚でセフィロスはすぐに名前を引き寄せた。

「あっ、なんだよセフィロス。心狭いな」
「心の狭さの問題じゃないでしょ。いつまで人妻に手を出すのよあんた…」
「恋愛に人妻もなにも関係ないさ。俺は綺麗なもの好きなんだ」

ほんとこいつ痛い目みせないと。
名前はぐっと力を込めるとセフィロスが力強く抱きしめなおした。

「相手にするな」
「…姿見えない敵を相手にする訓練でもする?三人とも」
「…ほう」
「なめられたものだな」
「全く…調子に乗らない方がいいぞ名前」
「こんな豪華な三人ソルジャーを相手に負かしたらとんでもなく自信つきそうじゃない?」

心が躍る様に、嬉しそうに話す名前の声にアンジールは首を左右に振りながら溜息をつく。

「俺は降りる。じゃあな、次の任務のことで会議があるから」
「えー…」
「じゃあ、ジェネシスと俺の相手だな」

抱きしめられたまま名前はセフィロスの顔を見上げた。

「二人相手だと犯されそうで嫌だ。3Pはちょっとねえ…いて!」

見えないはずのセフィロスに頭を叩かれ、涙目になりながら睨みつけた。


  
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