海賊万博の招待状

それはある海域を浮上して航海中のハートの海賊団の船に届いた。一通の招待状。
食堂に集まり、キャプテンが開封するとそれを後ろから覗き込み、隣に座ってるシャチが声を上げて読み出した。



親愛なるハートの海賊団ご一同。
敵船・同盟、入り乱れ
酒を酌み交わすのもまた一興。

来るもの拒まず、去るもの追わず
この世界一の大宴、
『海賊万博』にぜひ参加されたし。

Bunena Festa


なお、今回は余興として“海賊王ゴールド・ロジャー”にまつわるお宝探しをご用意しております。



全てを読み終わった後、私は覗き込んでいる仲間と顔を見合わせて、全員がニンマリ。

「…キャプテン」

ペンギンが呼ぶと、キャプテンも口角を上げて悪そうな笑みを浮かべる。

「行くぞ、海賊万博」
「やりー!!さすが船長」

おおー!!っと一気に食堂が大騒ぎになった。
私もイッカクと抱き合いながら飛び跳ねて喜んだ。

向かうは海賊万博。
呑んで、食べて、遊んで。
最高に楽しそうだ。

キャプテンとペンギンは操舵室に居るベポに航路を話し合いに行くのか食堂を出て行き、それぞれが海賊万博のことを話しながら思い思いに過ごす。

「アイス食べたいなぁ。三段アイス」
「あたしはナマエが麦わらのとこで食べたって言ってた、たこ焼き食べてみたいな」
「あー、あれねー!あるかもね!食べよ食べよ!!」

イッカクとしばらく何食べたいかとか宝は何なのかという話で盛り上がり、そろそろ女の風呂時間ということでイッカクと共に席を立つ。

食堂を出ようとドアを開ければキャプテンとその後ろにペンギンが見える。
どうやら話し合いは終わったようだ。

ペンギンが食堂に集合かけ、仕方なく私たちも再び食堂に戻り席についた。
キャプテンが立ちながら口を開けば、全員が聞く態勢となる。
騒がしかった食堂が一気に静まり、キャプテンの低い声がよく響いた。

「会場の島までは2日かかる。多くの海賊が向かってるだろうから、これからいつもより戦闘が多くなると予想される。いつでも戦闘出来る様に準備はしておけ。島へ着いたら暫くは滞在する予定だが、行動するなら5人以上で行動しろ。喧嘩も女も自由だが、羽目を外し過ぎるなよ」
「アイアイ!!」
「女も海賊である可能性が高い。寝首かられねェようにだけ気を付けろ」
「アイアイ!!」
「宝探しのイベントが始まったら全員参加だ。海賊王の宝は、おれたちが手に入れるぞ」
「おおー!!!」
「以上だ」

みんなすごい興奮している。
いつもの返事より更に気合いの入った声でキャプテンに返事をしているため、キャプテンも呆れたような表情だ。
解散を合図に私もイッカクとお風呂に行くために出て行こうとしたら、私の腕を誰かに掴まれた。
立ち止まって振り返れば、犯人はキャプテン。
掴まれたままキャプテンは私ではなく、一緒に振り返った目の前のイッカクに声をかけ出した。

「イッカク」
「ん?なんすか?」
「コイツは今晩部屋に戻らねェ」
「えっ」
「アイアイ。んじゃ、また明日なーナマエ」

私は慌てて空いてる方の腕でイッカクの腕にしがみついた。

「ま、待った!キャプテン、今晩はちょっと」
「あ?」

キャプテンがこうしてイッカクに言う時は船長室で朝まで過ごさせられることがほとんど。いや、必ずだ。つまり…そういうことだ。

「とりあえず、お風呂の時間なので」
「おれの部屋でいいだろ。話す事もあるし、行くぞ」

キャプテンから話があると言われれば断れない。
大切な話かもしれないし、何かクルーの健康状態のことなのかもしれないし。
私はキャプテンをチラッと見て、イッカクの腕を渋々離した。

「また明日なー、ナマエ」
「明日いっぱい話すことあるから」
「はいはい、分かってるよ。キャプテン、明日はアタシに貸して下さいよー」

イッカクの背中を送り届けて、私はキャプテンに向き直った。

「部屋行くぞ」
「アイアーイ」








船長室に入ってドアを閉めるとキャプテンはソファにドサっと腰掛けて、自分の膝の上を叩いた。膝の上に乗れと。
向かい合って座る体勢はキャプテンのお気に入りらしい。逃げられないし、私の顔がよく見えるからと言われたが…私はものすごく恥ずかしい。

見つめ合ったまま私が動かないでいると、キャプテンが小首を傾げる。そして、その仕草、めちゃくちゃ可愛い。

「か、かわ…」
「…馬鹿なこと考えてねェで、さっさと来い」
「はい」

声のトーンが下がったので素直にキャプテンの上に足を開いて跨がり、乗り上げた。
キャプテンの両手が私の腰を支えるように回されて、更に体を密着させられる。

「話って何ですか?」
「別にない」
「…」

どうやらイチャイチャしたかっただけらしい。

「あっ、手紙見せてください」
「ん?ああ…ほら」

キャプテンのお尻にあるポケットから出された紙切れを、私の手の上に乗せた。

「…ブエナ…フェスタ…」
「知ってんのか?」
「いえ全く。キャプテンは?」
「知らねェ」

私の手から手紙を取り上げるとテーブルの上に放り投げて、再び私の腰に手を戻す。

「いっぱい買いたいですね」
「何買う気だ」
「三段アイスに、タコ焼きに、焼きそばに、焼きとうもろこしも!」
「食いもんばっかだな」

そう言いながら笑うキャプテンはやっぱりイケメンだ。
私も笑って、「キャプテンは?」と問いかけてみる。

「お前の食ってんのもらう」
「あげませんよ?一個も」
「くくく、食い意地すげェな」

食べ物もそうだけど色んなイベントもやってそうだ。
一番は海賊王、ゴールドロジャーの宝探しだし。
他の海賊ということはルフィ君やら他の超新星も来るのだろうか。
キャプテンの名前に並ぶ超新星。
彼らが来るというのなら更に警戒したほうがいい。

キャプテンの首は5億にまで値上がったのだから超新星の中でもルフィ君に次いで高額賞金首だ。
まあ、手紙にもあったけど酒を飲み交わそうというぐらいだから好戦的にはならないかもしれないが。

「海賊王のお宝、ライバル多そうですね」
「確かにな。奪い合いだ」
「燃えますね」
「燃え尽きるなよ」
「尽きません。燃え続けます」

目の前で握り拳を作りながらメラメラと、今から燃えてくる。
海賊王のお宝って何だろう。
きっとすごいものなんだろうと、色んなお宝を想像してみても…いや、想像がつかない。
なんたって海賊王のお宝とわざわざ言っているのだから、ただの金銀財宝ではなさそうだ。

私の握り拳が大きな手に覆われ、その両手をキャプテンの首の後ろに誘導される。
誘導されるままに、キャプテンの首の後ろに両腕を回せば機嫌良さそうな顔が見えた。

「へェ…。それで、そのまま夜も燃えてくれんのか?」
「それはどうですかね…その頃には燃え尽きてるかも」

頬を撫でられて、その手に甘えるようにすり寄ればキャプテンの片手が私の後頭部に回された。

ぐっと引き寄せられて唇と唇が合わさる。
私の唇を啄むように弄んだ後、唇を割って舌が入り込んできた。

「ん…」

舌が絡み合い、口内を犯される。
しばらくの間、私の口内をキャプテンの舌が撫で回すように動き、混ざり合った唾液が口角を伝って流れ落ちるのを感じた。

呼吸が苦しくなってきて、頭がクラクラしてくる。
キャプテンとのキスはいつも酸欠にされるけど、キャプテンは苦しくないのだろうか。

リップ音を鳴らしながら少し離れて、互いの吐息がぶつかり合う。

「はぁ、はぁ…きゃぷ、んんっ」

そしてまた足りないとばかりに後頭部を掴む手に力が入り、引き寄せられると再び塞がれる。
これはキャプテンが満足出来るまで堪能されるやつだ。

プルプルプルプル。
電伝虫の音が聞こえて混濁した意識が引き戻された。

「っ!んんっ!」

構わずキスを続けるキャプテンの後頭部を少し引っ張ると、キャプテンの頭から帽子がパサっと落ちた。

「はっ、はぁ、はぁ」
「…何だよ」
「で、電話っ!」
「ちっ」

いやいや舌打ちしとる場合じゃないだろ!
唇を離したキャプテンは私の後頭部掴んでいた手でティッシュを一枚取ると、そのままの体勢でティッシュと電伝虫を能力で入れ替え、手元に取り寄せた。

『あ、キャプテン!前方に交戦中と思われる海賊船が2隻見えるんだけど』

どうやら見張りをしているシャチかららしい。
戦闘準備をしようとキャプテンの上から退こうとしたら、腰を掴まれしっかり固定されて動けない。

「規模は」
『あー…小物同士の取っ組み合いって感じですかね』
「…暴れてェか」
『そりゃあー、本番の祭り前に暴れたいですし、前夜祭で呑みたいっすよ』
「くくく、なら合図だせ。乗り込むぞ」
『よっしゃ!!アイアイ!キャプテン!!』

どうやらその二隻から酒とお宝をぶんどることに決めたらしい。
電話を切って、もう一度後頭部を掴まれると噛み付かれるようにキスをされる。今度は短いキスだ。
やっと私の体は解放されて、キャプテンの体から降りた。

「刀は」
「部屋ですけど、たぶん甲板に出ればイッカクが持って出てきてくれると思います」
「常に持っておけよ」
「取りに行く前にキャプテンがここに連れてきたんじゃないですか!」

私の言葉は華麗に無視され、ソファに落ちた帽子をかぶると鬼哭を肩にかけた。

「行くぞ」
「え、無視ですか?無視ですよね?無視だ、無視だー横暴だー」
「しつけェな」

笑った顔がかっこよくて、どうでも良くなった。
顔が良すぎると得だ。我らがキャプテンはカッコ良すぎる。





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