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 ようやく泣き止んだハーマイオニーだが、立ち上がる気力がないのか座り込んだままぼうっと宙を眺めている。こんな投げやりなハーマイオニーは初めてだ。なんとか励まそうと言葉を投げかけても無反応だったハーマイオニーだが「困ったことがあるなら言って、友達でしょ!」と言うと意を決したように話し出す――。



「……えーと、つまり、私を助けたら落第するということかしら?」

 黄色い鳥の刺繍がしてあるハンカチを懐から取り出したハーマイオニーは、目元を拭いながら頷く。いわく、私は十に及ぶ校則を破り、罰則として縛り上げられているらしい。体罰なんて許されないはずだとハーマイオニーは抗議し、私を助けようとしたのだが、レイブンクローの寮監フリットウィック先生に、もし私を助けたら落第になると宣告されたそうだ。
 シクシクと泣き出したハーマイオニーにどう反応するべきか迷っていると、私を縛っている縄の力が強くなる。肌に食い込んだ縄が気道を圧迫してくるので「ぐぇっ」とカエルが潰れたような声が出た。これ以上締め付けられたら嫌だなと思っていると、ハーマイオニーが駆け寄ってきて縄を掴む。ハーマイオニーが縄を掴んだ瞬間、どこからか現れたフリットウィック先生が「落第にしますよ」と言うのでハーマイオニーの顔は蒼白になるも、それでも縄から手を離すことはない。

「残念です、ミスグレンジャー」

 そう言って消えていったフリットウィック先生に目を向けることなく、ハーマイオニーはなんとかして縄をちぎろうとする。目にはたっぷりの涙が溜まっていて、嗚咽を堪えるように歯を食いしばっていた。無理に力を入れて引っ張るのでハーマイオニーの手からは血が滲み始めていて、それでも縄はビクともしない。

「ハーマイオニー、血が出てるわ」
「いいの、こんなのいいのよ。ごめんなさい、ハリー。すぐにあなたを助けなくて。自分にとって何が大切なのか、わかってなかったみたい」

 ハーマイオニーがズズ…と鼻をすすったとき――――バチン! という衝撃とともに、正方形の部屋に戻ってきた。何が起こったのか理解できていないハーマイオニーがキョロキョロして、私を見付けるとぎゅっと抱き締める。ロンは既に私をぎゅっとしていたので三人でぎゅうぎゅうしていると、コツンと音がした。
 私達以外にクィレル先生しかいないこの部屋で物音がするなんてと顔を上げると、そこにはリドル先生が立っていた。

190428

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