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 ゆっくりと歩を進めるリドル先生は、私達三人をチラリと見て納得したように頷く。そして床に転がっているクィレル先生に杖を向けた。それまでピクリとも動かなかったクィレル先生が、紐で吊られているかのような不自然な動きで起き上がる。リドル先生は杖を仕舞うとクィレル先生を伴って部屋を出て行こうとしたのだが「リドル先生!」とハーマイオニーが呼び止めた。ハーマイオニーが言葉を発する前に、リドル先生が口を開く。

「ここにある罠は、賢者の石を守るために用意したものだ。その扉の奥にあるのが、賢者の石さ。興味があるなら行ってみるといい」

 白い壁に溶け込むような真っ白い扉を指差して告げたリドル先生に反応したのはロンで、目を輝かせて扉へ向かおうとしたのだがハーマイオニーに腕を掴まれた。文句を言いたそうな顔をしているロンを無視して、ハーマイオニーはリドル先生を見据える。

「クィレル先生、明らかに正常じゃありませんよね。いったいどういうことですか?」

 ハーマイオニーは努めて冷静にそう言ったのだが、つり上がっている眉毛がリドル先生への不信感を示している。

「この部屋に入った者は、一番嫌な記憶を引っ張り出される。ミスグレンジャー、君はよくわかっているんじゃないかな。……そう、つまり、クィレル先生は一番嫌な記憶の中にいるということさ」

 なんてことのないように言ってのけたリドル先生に、ハーマイオニーはますます険しい顔をする。

「それはおかしいと思います。だってあれは――」
「ああ、わかった、わかった。詳しいことは後できちんと説明しよう。今一番の問題は、クィレル先生を助けることだ。そうだろう? ミスグレンジャー」

 そう言って背中を向けたリドル先生は呼び止める暇もなく、クィレル先生と共に目の前から消えてしまった。

「もう! いったいどういうこと!」

 リドル先生が消えた空間に吐き捨てるようにハーマイオニーが言う。地団駄まで踏みそうな様子のハーマイオニーをなんとか宥めてから、私達は今あった出来事をそれぞれ報告し合う。私とロンの報告にハーマイオニーはますます難しい顔をしたけれど、とりあえず奥の部屋へ行ってみようということになった。
 リドル先生が示していた真っ白な扉についているノブもまた白い。この先に賢者の石が眠っているとリドル先生は言っていた。前に賢者の石を壊すことになったとハグリッドが言っていたが、未だ健在する賢者の石。ロンがわくわくと白いドアノブをひねった。

190429

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