54

ロン視点
 誰かに背中を押され、覗き込んでいた扉へ真っ逆さまに落ちた。落っこちた。見事に顔面から着地を決めた僕は、ここが固い床ではなく弾力のあるツタであることに感謝をする。しかし、それはほんの数秒のことだ。まさか、感謝したツタに絞め殺されることになるとは――。

「ハーマイオニー! このツタ! なんか締め付けてくるよ! なんとかならないの?!」

 隣にいる博識な友人に目を向けると、いつも冷静な彼女は必死な形相をしていた。

「ロン、ハリーが! 三つも頭がついた犬がいたの! ハリーは私たちを助けてくれたのよ!」
「ええ? なんだって?!」
「なんでハリーは降りてこないの? なにかあったのかしら!」

 珍しく取り乱した様子のハーマイオニーが、心配そうに扉を見上げている。よく事態を飲み込めないが、ハリーに危機が迫っているらしい。手を伸ばしても届くことのない暗闇に向かって「ハリー!」と叫んでも返事が返ってくることはない。その間にも、ツタはどんどん絡みついてきた。

「ハーマイオニー! とりあえず、ここから抜け出そう! このツタが邪魔で魔法も使えないよ!」
「でも! ハリーが!」
「アイツなら大丈夫さ! なんていったって僕の、僕らの親友だろ!」

 なだめるように発した声にようやく落ち着きを取り戻したハーマイオニーは、ブツブツとこの状況を分析し始めたので、僕は僕でなんとかこのツタを振り払おうとする。しかし抗えば抗うほどツタは絡みつき、どんどん体を締め付けてきた。こんな所で死んでたまるかと暴れていると――ドスン! 上から、何かが落ちてきた。
 「いてて…」と腰をさすっているのはハリーで、彼女の無事を喜ぶ暇もなく、ツタと格闘する。なんとかポケットに入っている杖を取り出そうとしたとき――無情にも、ハーマイオニーがツタに飲み込まれた。ハーマイオニーの悲痛な叫びが聞こえる。
 早くこのツタをどうにかして彼女を助けないとと焦る僕に「ロン落ち着いて! ハーマイオニーがじっとしてって言ってるでしょ!」とハリーが訳の分からないことを言う。そうこうしているうちに、なんと、ハリーまでツタに飲み込まれた。

「うあああ! ハリー!! こいつめ! よくも僕の親友を!」

 足でツタを蹴り飛ばそうとしたのだが、体に食い込むツタのせいで弱々しい蹴りになった。仇をとることも出来ないなんてとむしゃくしゃして暴れていると、まばゆい光がその場を照らし出す。するとツタが体から離れていき、ツタという支えを失った体はツタの底に放り出された。

190419

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