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 入学式の日に私の手を握っていてくれたロンだったらこんな意地の悪い事をしないで「僕もハリーと仲良くしたいよ!」とか言ってくれたのではないだろうか。そんなことを考えていたらハーマイオニーが私の両手を包み込んで「私もハリーともっと仲良くしたいと思っているわ」と言う。ハーマイオニーがそんなことを言うのは初めてなので、とても驚いた。

 そんな感激の場面を台無しにしたのは、ホグワーツの管理人アーガス・フィルチだ。カツン、カツンと音をたてて歩くフィルチの姿は見えないが、普段より早い歩調はフィルチの機嫌の良さを示している。フィルチの機嫌が良いということは、生徒がなにかをやらかしたということだ。生徒に罰則を与えることを生きがいにしているフィルチはどうやらこちらに向かっているらしい。ここには私たち三人しかおらず、私たちに罰則を与えるためにフィルチは意気揚々としているのだろう。私たちはなにも悪いことなどしていないぞと胸を張って言えるが、フィルチの前ではそんなの戯言だ。難癖つけて罰則を与えるに違いないと決めつけたのは私だけではないようで、ロンとハーマイオニーと頷き合う。

 ハーマイオニーがアロホモーラと唱えて入った部屋までは追ってこないだろうという考えはどうやら当たりのようだ。しかし、物事は上手くいかない。
 足音が遠ざかっていくのを確認してからドアを開けようとしたが、外側から鍵でもかけられたのかドアが動かないのだ。ハーマイオニーがアロホモーラと唱えても開くことはない扉に困っていると、ロンが叫ぶ。

「こっちに地下があるみたいだよ!」

 ロンの言葉に急いでハーマイオニーと走り寄ると、地面に正方形の扉がある。ここは一階ではないのでこの下を地下と呼ぶのかはわからないが、窓のないこの部屋から移動できるのはこの扉しかないようだ。
 重くもなく軽くもない扉を開けると、それなりの大きさの部屋があり地面を覆うようにツタが生い茂っている。なんだこの植物は、と問い掛けようとハーマイオニーに視線を向けると、彼女の背後に三つの頭がついた巨大な猛犬が佇んでいることに気付いた。口が動くよりも先に体が反応し、ハーマイオニーとロンを扉の奥へと突き落とす。驚いた顔で私を見てから猛犬の存在に気付いたハーマイオニーが私の腕を掴む。いや、掴もうと伸ばした手は私に触れることなく、ハーマイオニーは扉の奥へと吸い込まれていった。

181207

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