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 リドル先生の特訓は、相変わらず過酷である。それをちょっぴり楽しんできている自分が怖い今日この頃。


 始めの時のように不眠不休ではない特訓は、新しい情報がたくさん入ってくるお気に入りの時間になりつつあった。スネイプ先生の忠告を忘れた訳ではないが、私にこの特訓を断る事は出来ない。そしてリドル先生はスネイプ先生から忠告を受けたことを“見た”だろうに何も言ってくることはなく、特に問題は起きていない。

 明日は帰省した生徒が全員帰ってくるため、ひっそりと静まり返ったこのスリザリン談話室を独り占め出来るのも今日までだ。明日には、スリザリン談話室だけでなく、ホグワーツ中が賑やかになることだろう。
 冬の間にまたニョキニョキと伸びたトムは談話室のソファーに寝転がっている。手足が長いのでとても窮屈そうに見える。少し削ぎ落とした方がいいのでは、と考えた時、トムが私の存在に気付いたようで横たえていた身体を起こした。

「ハリー、いたのか」
「ええ、随分お寛ぎね」
「今日で談話室を独り占め出来るのも、最後だからな」

 どうやら考えている事は同じらしい。他のスリザリンの生徒は部屋に籠っているようで談話室には私とトムの二人きりだ。トムの向かいに置いてあるソファーに腰を下ろすとそのまま寝転がる。今日で最後だもの、いいわよね。私が寝転がるのを見届けていたトムも再び寝転がり二人でゴロゴロしていたのだが、リドル先生の登場により私たちはシャキンとした。リドル先生が談話室に来る事はあまりない。リドル先生は自分の利益にならない事はしないので談話室で生徒達と談笑することはないのだ。それは私達生徒にとっては有り難い事であるはずなのに、一部の女子生徒はたいそう残念がっている。
 いったいリドル先生は、誰に何の用事があるというのだろう。今日の特訓は終わりであると先刻リドル先生自身が告げたので、私に用事がないのは確定だ。用事があったなら私が帰る前に用件を言うはずであり、言い忘れるなんてことをリドル先生がするはずはない。というかいったい何時からリドル先生はそこに居たのだろう、トムがいきなりシャキンとしたから何事だと振り返ったらリドル先生がいて、トムがいなければ今も私はリドル先生の存在に気付かなかったかもしれない。
 無言で見下ろしてくるリドル先生は怖い、とても怖い。どうやら談話室でだらだらしていた事が許せないらしい。

160802

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