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「ミスポッター、質問に答えよう。いや、ミスヘンリーと言った方がいいですかな」

 スネイプ先生の言葉に肩が跳ね上がる。なぜその名前をと問い掛けるとスネイプ先生は面倒そうに息を吐く。そして、先程のマグカップに自白薬(真実薬とは違うものらしい)を混ぜていた事と、開心術を使った事を白状した。記憶を覗かれた事への戸惑いと、なぜそんな事をしたのかという困惑で気持ちがいっぱいになる。しかし、スネイプ先生はそんなことお構い無しだ。

「結論から言うと、ハリー・ポッターであり、ヘンリーでもある。――それと、一つ訂正しておくが、ハリー・ポッターに成り代わったのではない。始めからヘンリーであって、そして、ハリー・ポッターでもあった。忘れているだけであろう」

 そう言ってスネイプ先生は椅子の背凭れに寄りかかり、足を組んだ。スネイプ先生が手に持っていたはずの羽ペンはいつの間かゆったりと机で休んでいる。

「ヘンリーであり、ハリー・ポッターであると、保証しよう」

 ストンと胸に落ちてきた言葉は、無条件に信用出来る気がした。

「それと、忠告しておく。リドル先生にはあまり近付くな。奴にも開心術をかけられている。それも、常にな。記憶を覗かれるのが好きだというなら、止めはせんが」

 スネイプ先生はそれだけを吐き捨てるように言うと寝転ばせた羽ペンを無理矢理起こして再び資料に没頭する。まだ聞かなければならない事はある気もするが、忠告だけを胸に刻んで部屋を出る事にした。スネイプ先生は部屋を出ていく私にチラリとも視線を寄越さずに見送った。

 部屋を出ると黒く長い廊下が真っ直ぐに伸びており、今が夜中であることを思い出す。ハーマイオニーに叩き込まれた光を灯す魔法を唱えていつもと様子の違う廊下を歩いていたのだが、透明マントが手元にない事に気付き、いったいどこに忘れたのだろうと首を傾げるもきっとあの鏡のところだろうと決め付ける。というか他に思い当たる所がない、スネイプ先生の部屋に置いてきていないのだけは確実だ。
 フラフラしていたらたどり着いた鏡の部屋なのでまた行き着く事が出来るか不安であったが、案外すぐに見付けることが出来た。床で丸まっているのは間違いなく私が置き忘れた透明マントで、ひょいと持ち上げると軽く埃を払ってから羽織った。この透明マントは貴重な物であるらしいのでそれなりに大事にしていたのだが、こんな所に置き忘れるとは、どんだけ動揺していたんだ。

160720

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