34 ロンとトムは賢者の石の話で盛り上がっている。壊すくらいならくれたっていいのに、と言い合う二人が居る場所はグリフィンドールの談話室で、何故か私も、二人の座るソファーの目の前に座っていた。スリザリンの私とトムが何故グリフィンドール居るのだと問われれば私にもわからない。あえて言うのならば、今が長期間の休暇であるからだ。グリフィンドールで残っているのはロンとその兄弟くらいで、文句を言われることはないだろう。いや、ロンの兄である双子のそのまた兄であるパーシーに文句を言われたが双子が丸め込んでいた。双子にあーだこーだ言われたら諦めるのも当然だろう、あの双子はしつこい上に諦めが悪い。双子と言い合うくらいなら勉強してた方が有意義だと、私たちのことはなかったことにしたパーシーは懸命だ。 「トム、そろそろ寮に戻りましょうよ」 「いや、今日はここに泊まる」 「え? あ、ああ、そう。じゃあ私は帰るわ」 これ以上付き合いきれない、と立ち上がろうとするも「コイツ何言ってるんだ?」という顔をしたロンがハリーも泊まるに決まってるだろ、と当然のように言う。言いたい事はたくさんあったが、なんだかどうでもよくなってしまって寝間着を取りにスリザリン寮に戻ったのだが、リドル先生に掴まり説教を食らうはめになった。 「他の寮に泊まるなんて何を考えているんだ。よりによってグリフィンドール! 有り得ない」 いつもより感情的なリドル先生は、女が男のところに泊まるということよりも、グリフィンドールに泊まるという事が許せないらしい。スリザリンの誇りを持て、と説教を受けて一時間が経ち、リドル先生の怒りが収まってきた頃を見計らって、賢者の石の事を聞いてみた。賢者の石について聞きたいというよりいい加減話をそらしたかった。リドル先生は「ハグリッドめ……」とお怒りみたいだ、ドンマイハグリッド。 「賢者の石についてどこまで知っている?」 「不老不死になれるということだけ」 「それだけか。なら問題はないね」 にこりとわざとらしい笑みを見せたリドル先生は都合が悪くなるとすぐに追い出す。これ以上説教を受けずに済んだ事に安堵するも、背中にかけられたリドル先生の言葉に体が硬直する。 ハリー・ポッターになってからン年絶つ私はそこそこイギリスの風習について理解していた。していたけれど、頭で理解していただけで、ダーズリー家にいたぼっちの私が風習に参加する機会など皆無だった。そう、私は悪くない、はずだ。 150830 次のページを開く→ 目次/しおりを挟む [top] |