35

「リドル先生お願いしますううう」

 情けない声を出す私を一瞥したリドル先生は、条件を飲むならいいよと軽く言う。リドル先生が出す条件なんて恐ろしいと前言撤回しようとしたのだが「閉心術を覚えるのが条件」という想像していたものより楽そうな条件に、藁にもすがりたい私は頷いた。頷いてしまった。



「まったく。クリスマス目前だというのに、プレゼントを用意していないとはね」

 鼻で笑ってから羊皮紙を一枚取り出したリドル先生は、そこに宛名とプレゼントの一覧を書けと言う。言われるがままに羽ペンで羊皮紙の上に友達の名前を並べていくも、誰に何をプレゼントしていいかわからずに手が止まる。な、悩む。

「そんなに悩まないでも、適当でいいよ」
「適当がよくわかりません」
「じゃあ“スリザリンの歴史書”でいいよ」

 私が貰ったら一生開くことはないだろうプレゼントを挙げたリドル先生をじっとりと見上げるも考えるのが面倒になったので言われた通りに書き込む。本当に書くとは思わなかったのかリドル先生が呆れた眼差しを向けてくるけれど気にせずに羊皮紙を差し出した。

「君、アホだね。まぁいいや、クリスマスまでに間に合うよう手配しておくよ」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」

 リドル先生は私が渡した羊皮紙を細かくちぎり、それにフッと息を吹き掛ける。すると、ちぎって小さくなった羊皮紙は空気に溶けるかのように消えていく。リドル先生がいくら謎の行動をしても理解しようなんて思わない、というか理解することはできないので何も言わずに眺めていたのだが、「じゃあ閉心術の訓練をするよ」と当然のように言い放ったリドル先生に驚く。え、今からと戸惑う私に杖を向けたリドル先生との特訓はそれから数日間行われた。本当に、文字通り数日間ぶっ続けで特訓は行われ、眠たくなる度に変な薬を飲まされ、不思議な事にお腹が空くことはなく、唯一解放されたのはお手洗いの時のみだ。
 閉心術とは高度な魔法らしい。魔女のひよっこの私が数日で覚えることは当然なくて、クリスマスが終わったらまた特訓をするよ、とのお言葉をいただいた。クリスマスまで見逃してくれたことを喜ぶべきか、これからの事を考えて顔を青くするべきか。
 異常なまでに頭の良いリドル先生の教えは、正直好きである。リドル先生が担当する闇の防衛術の授業は他の授業より熱心に聞いており、レポートを高く評価して貰うこともあるくらいだ。だからワンツーマンのレッスンはとても嬉しい。しかし不眠不休はどうにかならないだろうか。「ならないよ」……ならないのね。

150831

次のページを開く→

目次/しおりを挟む
[top]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -