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 目を覚ますと慣れ親しんだまっ暗闇の物置ではなかったので戸惑ったがすぐにホグワーツに入学したことを思い出す。最近狭く感じてきた階段下の物置のベッドとは違い、手足をめいっぱい広げてもまだまだ余裕のあるベッドはスプリングがよくきいているし、シーツはふわふわ、洗い立てのソープの香りまでする。このまま心地良いベッドに身を任せていたいがゆっくり二度寝する時間はない。
 寝巻きを脱いでパリッとした制服に袖を通すと、胸がワクワクしてくる。これから魔法界での学校生活が始まるのだ。緑と銀色をしたスリザリンカラーのネクタイを締めると、さらにワクワクした。そろそろ他の子も起こした方がいいかしらと時計を見ていると、パンジーとマリーが起きてくる。まだ瞼が重そうな二人が着替えを始めたので、私はスヤスヤ眠るアリスを起こすことにした。苦労してアリスを起こし、それから皆で一緒に朝食を摂ろうと約束した。
 三人が支度を終えるまで手持ち無沙汰になった私は、談話室に降りていく。部屋の隅っこの目立たない位置にあるソファーに腰を下ろし、彼女たちを待つことにした。談話室に降りてくる人達を眺め、昨日お世話になったトムの姿をなんとなく探しているとちょうど男子部屋から降りてきたマルフォイと目が合った。昨日マルフォイの両脇にいた体格の良い二人の男の子の姿は見当たらない。

「えーと、おはよう、マルフォイ」
「ああ、おはよう」
「昨日の二人は?」
「アイツらはまだ寝てる」
「ふぅん」

 昨日とは違い険悪ではない様子に疑問を抱くも、昨日は入学で緊張していたからあんな態度だったのかもしれない。もしかしたら私も緊張で知らず知らずのうちに不躾な態度になってたかもしれない。そう決め付けて彼の態度の変化に言及することはしなかったが、つっけんどんなので会話が続かず昨日の饒舌マルフォイは何処に行ったのだと言及したくなった。

「ご飯、行かないの?」
「ハリーこそ」
「私はルームメートを待っているの。……あぁ、マルフォイもあの二人を待っているの?」

 私の座っている二人がけのソファーに腰を下ろしたマルフォイに言葉を投げ掛けた時、頭に重みを感じた。突然のことに驚いて顔を上げるとそこにはトムが居て「グッモーニング」と眠そうな顔で明るい挨拶をする。挨拶を返してから眠そうな理由を尋ねると、朝はたいていこうだと返ってきた。

「ハリー、隣のは誰?」
「彼はマルフォイよ。私と同じピカピカの一年生」
「へー。ハリー、一日で良い男捕まえたな」
「マルフォイ、彼は二つ年上のトムよ」
「無視するなよ」
「無視してないわ」

 私をからかう気満々なトムにそう言ってから、急に静かになったマルフォイに目を向ける。口を結んでこちらを見ようとしないマルフォイの表情は不機嫌そうで、トムに人見知りしたのかもしれないと思ったがトムの人柄が気に入らないだけかもしれない。とにかくトムが来た途端様子が変わったのでトムと一緒に居ない方が懸命だと判断をしてマルフォイの前からトムを連れ出すことにした。

150808

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