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 マルフォイが居なくなった空間が余程心地良いのか、ロンはリラックスした様子でお菓子を摘まむ。これ美味しいよ、と私が買ってあげたお菓子を分けてくれたので何も考えずにビーンズを口に放り込むと、最低な味がした。慌ててかぼちゃジュースを飲む私を見てロンがケタケタ笑う。

「僕の友達になるなら、これくらいは当然さ」

 パチンと下手くそなウインクをしたロンはまた新しいお菓子を口に運ぶ。次々とロンのお腹に消えていくお菓子を眺めていると、またコンパートメントの扉が開く。マルフォイが来たんじゃないかと身構えるロンの予想を裏切り、おさげが似合いそうな栗色の髪をした少女が立っていた。大人しそうだという印象が一瞬で消え去るような饒舌っぷりをみせた彼女の名前はハーマイオニー・グレンジャーといい、その上からものを言うような喋り方はマルフォイと似通ったものを感じる。ロンはまたウエーっという顔をした。

「あなた、自分のことなんにも知らないのね」

 呆れたように言うハーマイオニーはハリー・ポッターのことをよく知っていた。致死率百パーセント、治療法がないという悪魔の伝染病にかかりながらも“生き残った女の子”であり“世界の救世主”。それがハリー・ポッターであり、ハグリッドが重要な事を教え忘れていたことが判明する。――そもそも、難病が治ったからといって魔法族の誰もが、持て囃す程有名になるのは、大袈裟であり不可解ではあった。では、何故持て囃されるのかといえば、ハリー・ポッターが難病の“特効薬”となったからだ。ハリー・ポッターが体内で生成した抗体を感染者にマグル式“輸血”をすることにより患者の病症が緩和し、少なくとも命を落とすことはなくなった。ハーマイオニーの言葉の半分も理解することは出来なかったが、かいつまんで言うとこういうことだ。

「へぇ、君って詳しいんだね」

 お菓子を口に詰め込みながら言うロンを見てハーマイオニーは片方の眉を動かしてから見なかったふりをする。折角褒めたのになんだその態度はと言うようにムッとしたロンだが、喉にお菓子が突っかかったのかゴホゴホ噎せて手近にあるかぼちゃジュースを飲み干す。私のかぼちゃジュース……。空になったコップを見ているとロンはあからさまに目を反らし、ハーマイオニーは空気を察したのか哀れみ、慰めにとみすぼらしさを強調するセロハンテープだらけの眼鏡をオキュラス レパロと呪文で直してくれた。杖で魔法を使うところを初めてみたが、魔法って本当にあるんだと今更ながら驚く。 これから私も魔法を習うなんて夢みたいだ。

150722

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