08

 時間とともに少しずつ仕事に馴染んでいき、ジェームズの卒業まで僅かになったある日。仕事で急きょ訪れることになったホグワーツでジェームズの姿を必死に探していた。ここのところ忙しくて連絡すらとっていなかったため、少しでもいいから彼と会いたかったのだ。
 なかなか見当たらないジェームズを見つけたのは、人気のない中庭だった。赤い髪の女の子と向き合い楽しそうにお喋りしているジェームズは私といるときよりも楽しそうで――いや、そんなことはない。

「ジェームズは、私のことが好きだもの」

 自分に言い聞かせるように呟いた言葉が虚しく響く。――その時、まるでタイミングを見計らったかのような会話が聞こえてきた。

「あ。ジェームズとリリーよ。また一緒にいるわ」
「恋人なのだから、一緒にいるのが当たり前でしょう」
「え? あの二人付き合ってるの?」
「ええ、ついこの間、ようやく、くっついたんですって。随分と前から両想いだったけれど、ジェームズの年上彼女がなかなか別れてくれなかったらしいわ」

 指の先が冷たくなっていき、上手く息ができなくなった。否定をしたいけれど、ここ一年くらいまともに連絡すらとっていない私たちは恋人といえるのだろうか。唇を噛み、背を向ける。ジェームズに声をかけることなく私は魔法省に戻った。

150615
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