06 卒業後、魔法省に勤めた私は仕事に馴染むことができないでいた。私が所属する部署は、マグルに魔法族の存在を隠すことを主な仕事とし、マグルに魔法を見られたときは直ちに現場に飛び記憶の修正を行っている。 ある時、マグルの友人の命を救うために魔法を使った魔女のもとへ飛んだ。私と年齢のそう変わらない彼女は崖から転げ落ちた友人に魔法を放ち、命を救った。軽い怪我だけですんだ友人の元へ駆け寄った魔女に待っていたのは、この世の全ての恐れを詰め込んだような眼差しと「近寄らないで」という言葉である。 「ヘンリー」 「……」 「ヘンリー?」 ハッと顔を上げるとルシウスが顔を覗き込んでいて、少し眉を下げているルシウスに慌てて笑みを取り繕う。けれど付き合いの長いルシウスにそんな誤魔化しはきかないようで「悩みなら聞く」と私の前から立ち去ろうとしない彼に仕事を上手くやっていく自信がないと零した。 「マグルなんかと関わる部署なんてろくでもないとあれほど言っただろう」 「そうじゃないの。……絆が崩れる瞬間を見たのよ。とても……とても恐ろしいことだったわ」 思った以上に弱々しい声が出てしまい恥ずかしくなって咳払いをして紛らわす。 「君は、変わったな」 「?」 「ヘンリーがそんな感情を持っていると思わなかった。友人を多く持つ君だが、誰にも心を開いたことなどなかった。私にさえね。……だが、離れるのを恐ろしく思うほど大切な人が、できたのか」 ルシウスはそう言って、慈愛に満ちた表情をする。少し切なそうに、けれど私の成長を純粋に喜んでくれているようだ。 その後数言交わして別れたルシウスの視線を背中に感じた気がしたが、左腕につけている時計の針を見て慌てて自分の持ち場に走った。 150601 next 目次/しおりを挟む [top] |