03

 彼女との出会いは偶然だった。
 青々とした空に心地よい風……絶好の散歩日和だと箒にまたがり休日を堪能しているとき、偶々目に入った彼女に目を奪われた。美しい容姿をした彼女に見惚れたのではなく、彼女の顔に見覚えがあったからだ。確か、彼女の名前はヘンリー・ブラック。シリウスの親戚だと耳にしたことのある彼女を初めてまともに認識したのは半月前だった。スリザリンである彼女がリリーを助けたのは衝撃だったし、その後彼女のことを忘れてしまったリリーも衝撃だった。

 にー、と鳴きながら首元にすり寄るジュリアという名前の猫にゆるく微笑み、それから僕に視線を移したヘンリーの瞳は澄んでいる。

「ヘンリー」
「なあに?」
「君に一目惚れをしてしまったようだ」

 自然と口から出た言葉は少しだけ間違えていた。初めて会ったときからヘンリーに惹かれていることは事実だったが、彼女を好きになったのは今この瞬間だ。
 大きく目を見開いて驚きをあらわにした彼女は、少し間を空けてからおかしそうに笑い出す。クスクス笑う彼女は、楽しそうに目を細めて言う。

「なら、付き合う?」

 ヘンリーがなにを思ってそう言ったのかはわからないが、悩む時間も惜しんで頷く。それを見たヘンリーはますますおかしそうに笑い、顔を寄せて頬にキスをした。「よろしくね」と柔らかく微笑んだヘンリーとの交際が今この瞬間から始まったのだ。

150507
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