深まる闇

 禁じられた森の見回りを終わらせるため、仕方なくジェームズくんを引き連れて森の中を歩いていた。闇はいっそう深まっていく。

「明かりもなしにこの森を歩くなんて、なにを考えているんだ」
「……ジェームズくんだって明かり持っていなかったじゃないですか。この暗闇の中、よく私を見つけられましたね」
「聴覚と嗅覚を高める魔法を使っていたんだよ。……ねえ、ヘンリー」

 ジェームズくんが杖の先から出す光を頼りに二人並んで歩いていたのだが、不意に腕を掴まれ足が止まる。暗闇の中でも存在を主張するように輝く、こんじきの瞳と視線が絡む。
 澄んだ瞳に吸い込まれそうになり思わず体をこわばせると、楽しげに笑うジェームズくんの指が頬を撫でた。

「僕は、君のことが嫌いみたいだ」

 愛の告白をするように甘い声音で告げられた言葉を理解するよりも早くジェームズくんの手が顎を掴む。耳に近づいた形のいい唇が罵倒の言葉を並べていき、出会ったばかりの彼になにを言われようと傷つきはしないが不愉快なことには変わりなく彼の体を突き放した。すんなりと体を離したジェームズくんはそれから言葉を発することなく、時折口笛を吹きながらのんびりした足取りで私の後をついてくる。

130502
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