鉢合わせ

 一寸先も見えない闇の中を普段と変わらぬ歩調で歩いていた。歩くたびに枯れ葉が潰れる音が不気味に響き、道を開けるように鳥が逃げていく。夜中の森を歩いているのにはわけがあり、できるなら今すぐ回れ右をして自分の部屋に駆け込みたいがそういうわけにもいかない。――禁じられた森の見回り役を押し付けられたことに文句はないが、この寒さはどうにかならないだろうか。下手をしたら凍死するのではないかという寒さに震え、早く終わらせてしまおうと足を動かす。

「あれ? ヘンリー?」

 禁じられた森は獰猛な獣がうろついていて、生徒はおろか教師も滅多に寄りつきはしない。だから、禁じられた森の中をジェームズくんが当然のように歩いているなんてことはあってはならず、忍びこんだならせめてもう少しコソコソしてはくれないかと願うも、私を教師と思っていないジェームズくんには無理な願いなのだろう。
 彼を見なかったことにして立ち去りたい気持ちが強いが、あらかじめ教えられた通りに無断で禁じられた森に入った生徒に罰則を与える。グリフィンドール寮から点数を引き、明日の異世界学の後に罰則を言い渡すと告げてもケロッとした顔をしているジェームズくんは、罰則を受け慣れているのか、興味がないのか。

130430
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