疲弊した迷子

 そんなに離れたら見つかるよとジェームズくんが腰に腕を回した私が被っているのは透明マントなのだろう。彼になにを言っても無駄だろうと諦め半分の私は校内を好き勝手に連れ回され、体力的にはいくら連れ回されようと問題はないが、精神的に疲弊してきたところで透明マントを剥がれ、少し待っていてくれというジェームズくんに従い廊下の端で待っていたのだが、彼が現れることは二度となかった。
 置いてけぼりにされたのではないかと気づいたときには体の芯まで冷えていて、急いで自室に戻ろうとするも、どの道が正しい帰り道か当てることはできず、完璧な迷子になった私の耳にどこからか足音が聞こえてきたのはそれから暫くしてのことだ。これ幸いと足音の持ち主を探し、無事に見つけることのできた黒髪の彼を呼び止めると、彼は大袈裟に肩を跳ねさせ、私から逃げるように走り出す。
 彼に追いつくことは簡単で、彼の肩を叩くと幽霊でも見たような顔をされ、見逃して欲しいと必死な様子で頼まれる。

「……見逃すって、なにをですか?」
「もう消灯時間を過ぎているじゃないですか。空き教室で勉強をしていたらいつの間にかこんな時間になっていて……次からは気をつけるので、減点はしないでもらえませんか」
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