シリウス視点

 今度の悪戯で使おうと企んでいる薬品を作るために、滅多に使われることのない女子トイレを実験場所として、消灯間際まで調合を繰り返していた。空き時間は全て実験に費やし、おかげで今日一日まともに飯を食べることができなかったが、完璧な薬品を作ることができたと口端をつり上げる。
 実験の後始末をする前に一度、女子トイレを出て、男子トイレに入り用を済ませ、腕に巻いてある時計を確認すると消灯時間は過ぎていて、念のためにジェームズに借りた透明マントを被り女子トイレまで戻った。――この時の俺は、とても油断していたらしい。

「……!」

 女子トイレで透明マントを脱いだ瞬間を、女に見られたのだ。無造作に伸ばされた黒髪も、アジア系の顔立ちも、見覚えはない。ただ、一つだけ。煌々と燃え盛る炎のような瞳には見覚えがあり、反吐が出そうになる。あの真っ赤な瞳は、スリザリンの寮監であるトム・リドルにそっくりだ。ハンサムで優しいと、寮を問わずに人気のあるリドルは、作られた人形のように気味が悪く、同級生のセブルス・スネイプと同じくらい、リドルが嫌いである。ローブの下で杖を構え、女が一言でも言葉を発した瞬間に呪いをかけてやろうとしていたのだが、女は一度俺に視線を向けただけで、一言も喋ることなくトイレを出て行った。

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