抱擁の意味は隠される

 お腹がいっぱいになり、眠気に誘われながら広間から伸びる廊下を歩いていると、唐突にリドルが現れた。待たせたことへの謝罪と、気遣ってくれたことへの感謝をしようとするも、まるで素敵なものを見つけたというように彼の目が輝きだすので、思わずたじろぐ。広間で見た笑みより、ぐんと甘く感じる笑顔を作ったリドルは、私の目の前まで闊歩し、親愛を示すように抱擁をする。

「えーと、あの……待たせてごめんなさい」
「本当だよね。あれからどれだけの月日が流れたことか」
「え?」
「まあ、いいや。ほら、君の部屋に案内するよ」

 私の手を引いてエスコートしてくれるリドルはとても紳士的だけれど、口元に浮かべている笑みはどこか悪戯っぽい。
 リドルに案内された部屋は狭くもなく広くもなく、ちょうどいい大きさで、すでに家具が揃っている。お手洗いはあっち、風呂はあっちと教えてくれたリドルは、明日の朝迎えにくると約束をして、この部屋からそう遠くないという自室に帰っていく。リドルの背中を見送ってから早速お手洗いに行こうとしたのだが、トイレに向かう途中、一人の男子生徒に呼び止められ、足を止める。くしゃくしゃの髪をさらにくしゃくしゃにするように手を動かす彼の顔には、見覚えがあった。

130113
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