葉っぱの布団と、鹿

 名前を、呼ばれた気がした。けれどそれは気のせいだったようで、閉じていた目を開けると、そこには誰もいない。
 落ち葉の布団から体を起こすと、そこは見覚えのない場所だった。なぜこんなところで寝ているのだろうと首を傾げるも、こういったことは度々あり、原因もわかっている。またかという気持ちで頭についている枯れ葉を落とし、そこで違和感に気づく。私に寄り添うよう足元で丸まっている、一匹の牡鹿。どこにでもいそうな風貌をしている牡鹿は、ペットにはみえないが、私を温めるかのようにくっついている牡鹿は、野生の鹿にもみえない。
 起こしてしまわないよう気をつけそっと牡鹿のたてがみを撫でると、牡鹿は気持ちよさそうに喉を鳴らした。そして、目を開く。牡鹿の瞳は、太陽のようなこんじきをしていて、煌めくように光る二つの目玉が私をとらえたかと思うと、すりよってきた。牡鹿の人懐っこさに驚きつつ、もう一度たてがみを撫でると、牡鹿は私の膝に顎を乗せ、至福そうに目を細める。

「君は、本当に鹿なの?」

 何度も鹿を見たことがあるわけではないが、私の記憶にあるかぎり、鹿とはこんなに人懐っこい動物ではない。餌をねだってこないところからみて、餌付けをされているわけでもないのだろう。

130107
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