百獣の王より強い彼

 動物園に向かう道中のこと。歩道を歩いていても、電車に揺られていても、ボスは心ここにあらずといった様子で、私との二人旅はそんなに退屈なのかだろうかと落ち込んだ。けれど、動物園に着くとボスのテンションも持ち直したようで、楽しそうに園内を駆け回っている。いつの間にか手を繋いでいることに気づき頬が熱を持ったが、照れている場合ではなく、リボーンに課されたミッションをこなさなければならない。

「ヘンリーちゃん!」

 ――やはり、どこか浮かれていたらしい。私の前に、ボスが両腕を広げて立ちはだかり、獰猛なライオンから、身をていして守ってくれている。いつもならライオンを発見した瞬間に気絶させることができただろうに、油断していたせいで、反応が遅れてしまった。そして、失態を犯したというのに、ボスの広い背中に守られて安心感を得ている私は、不謹慎だと自分でも思う。今のボスは、誰よりも頼もしくみえた。きっと死ぬ気になってもボスが私に勝てることはないだろうけれど、今のボスなら誰にも負けないと思わせる不明確な確信がある。

 ボスの凄さを実感した私が選んだボスに見合う動物は、動物園で一番大きな動物、象だ。百獣の王であるライオンよりも強く、そしてその強さをひけらかさない象こそがピッタリだと思ったのだが、リボーンに即、却下された。……少しだけ、悲しくなった。

130102
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