ツナ視点

 怒涛のバレンタインが終わりを告げ、ヘンリーを送ってこいとリボーンに蹴られたのはつい先ほどのことで、薄暗くなってきた道をヘンリーさんと二人きりで歩いていた。いつものスーツの上に分厚い上着を着込んだヘンリーさんは、白い息を吐き出しマフラーに顔をうずめてしまう。鼻の頭が赤くなっているので、早く送り届けないといけないと早歩きをしていたのだが「ボス、少し公園に寄りたい」と俺の服の裾を引っ張るヘンリーさんの申し出を断ることなんてできなかった。公園のブランコに腰を下ろしたヘンリーさんは、ブランコをこぐわけでもなく、自分の足元を見つめている。身じろぎ一つすらしない彼女を見ていたら不安になり、気づいたら自分から声をかけていた。女の子に自分から声をかけることなんて滅多になく、ましてや年上の女性に声をかけるなんて、初めてかもしれない。緊張で、声が震える。

「あの、ヘンリーさん、」
「それ」
「……え?」
「その、呼び方が、よそよそしいというか……私はボスの部下なんだから、呼び捨てで、いい、です」

 尻すぼみになっていく言葉はヘンリーさんの葛藤を表しているようで、思わず笑ってしまった。恥ずかしそうに頬を染めた彼女は、唇を尖らせて、顔を逸らしてしまう。ごめんと謝り、ヘンリーちゃんと呼び直すと、ヘンリーちゃんは控えめに笑みを浮かべた。

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