他の人を、誘ったら?

 胸ポケットに入っている仕事用の携帯を取り出す。履歴からディーノの番号を呼び出し、耳に当てると、呼び出し音が響き、聞き覚えのある声が耳に届く。ポケットの中に入れたチケットを取り出して眺めながら、文句を言うために口を開いた。

「ディーノ、この映画のチケットはなんですか」
『ん? 気に入らなかったか?』
「気に入らないというか、これ、イタリアで上映のチケットです。私、当分はイタリアに行くつもりはないので、他の人を誘ったらどうですか?」

 受話器の奥から銃声が響くので、仕事中だろうと予想し、早々に会話を終わらせようとしたのだが、慌てたようなディーノの声に引き止められる。仕事中じゃないのかと問いかけても大丈夫とだけ返され、迎えにいくからチケットを送り返すなと念を押すように二回言われ、別れの挨拶もなしに電話は切れた。通話終了の電子音を鳴らす携帯をいくらいじっても、再びディーノに繋がることはなく、仕方なく電源ボタンを押し、携帯をポケットに滑り込ませる。
 眉間に寄った皺を指で解していると、勢いよく玄関の扉が開き、部屋から顔を出したボスと一緒になって階段の下を覗きこむと、そこには神妙な面もちの獄寺くんがいて、彼は我が家のごとく家に上がり込んだかと思うと、フゥ太くんにボスの右腕ランキングをするよう求めていた。

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