褒めないで

 ボスもまだ宿題が終わっていないらしく、それなら一緒にやろうと、いったん解散してからボスの家に集まることになった。山本くんと一緒に家まで帰り、振り袖から愛用しているスーツに着替え、筆記用具とメモ帳を片手に、玄関で待っている山本くんに走り寄り、肩を並べて歩く。振り袖を着ていたときより外の空気が寒く感じてジャケットのポケットに手を入れると、山本くんに顔を覗き込まれた。

「寒いのか?」
「……少しだけ。けっこう中に着込んできたのですが」
「マフラー貸してやるよ。……そういや、振り袖脱いじまったんだな。ヘンリーって、ああいう格好も似合うのな」

 山本くんの温もりが残るマフラーが首に巻かれ、小さく息を吐き出す。白くなった息に視線を向けたまま、少し顔を赤くすると、山本くんに笑われた。

「ヘンリーって、照れ屋だよな」
「褒められ慣れないんです。山本くんこそ、口がお上手ですね」

 皮肉めいたことを口にしつつありがとうございますとお礼を言うとまた山本くんに笑われる。なんだか悔しくなって山本くんの腕を叩いていると、視界に見覚えのある姿が映り込み、こんなところで奇遇ですねと声をかけると、自称ボスの右腕の獄寺くんは、心底嫌そうな顔をした。

121206
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