褒めて、泣いて どうやら私以外は食料を持っていないらしく、背負ってきたリュックをボスに渡す。不思議そうにしているボスに、リュックを開けるよう促し、言われるがままにリュックを開けたボスは、中から出てきた食料に目を見開く。「これは……?」と言うボスに食料ですと言葉を返すと、そんなのは見ればわかんだよ! と獄寺くんに怒鳴られたので、差し上げますと言い直した。お礼を言うボスに首を振り、念のためにとたくさんの食料を持ってきた自分を褒める。 ハルという女の子と、獄寺くんのお姉さんだという女性に簡単な自己紹介をしてから、今日野宿することになった洞穴に、草でベッドを作っていく。 「ヘンリーさんは、こういうことに慣れているんですか?」 「?」 「いや、手慣れているというか、なんというか……」 「私、ずっと旅をしていたんです。……ううん、今も旅をしています。同じ世界にいることができない体質で、居場所なんてなくて、だから野宿は日常茶飯事です」 そこで言葉を区切り、口をつぐむ。こんな面白くない話をこれ以上聞かせるのはどうかと思っての行動だったが、ボスがあまりにも優しい表情で私を見るから、一筋の涙が頬を伝った。ボスが、まるで、ここが私の居場所だと、そう言ってくれているような気がしたのだ。 121202 次のページ# 目次/しおりを挟む [top] |