08

「姉上、先ほどは申し訳ありませんでした」

 空調整備がされた心地いい喫茶店の中、わざわざ席を立ち上がった総悟は腰を折って謝罪する。ちゃんと謝罪のできるいい子に育ってくれたと感動し、何気なく友達はできたのかと問うと銀色の髪がトレードマークの男性を紹介してくれた。銀時という名の彼に挨拶をし、三人で軽い食事をしながら本題に入る。

「総悟、私が今回江戸に来たのはね、総太を新選組に預けるためなの。病気になってしまって、」
「病気? いったいなんのですか?」
「たいしたことないのよ。でも子育ては厳しくて……近藤さんに相談して新選組に預かってもらうことになったの。総悟に相談もなしにごめんね。銀時さんも、もしよければ総太を構ってやってください」
「えー……あー……総次郎くん? どちら様で?」
「総太です。私の息子です」
「息子!?」

 大袈裟に驚きを表現した銀時さんがお若いのに、と嬉しい言葉を言ってくれ、笑顔でお礼を返してから総悟に向き直る。複雑そうな顔をした総悟は、それでも私を想って全ての文句を飲み込み首を縦に振った。

「総太はね、とてもいい子なのよ。総悟にそっくりだわ」
「総一郎くんに? それはいい子とは言わないんじゃ……いで!」
「姉上の子どもならいい子に決まっています」
「ふふ。総悟のように育って欲しくて総太って名付けたかいがあったわ」

 笑みを浮かべてそう言うも、次の銀時さんの問いかけに表情が固まる。父親は、という問いは誰かにされるだろうと予想していたけれど近藤さんも総悟も決して尋ねてくることはなかった。
 言葉が詰まった私を見てまずいことを言ったとでも思ったのか銀時さんが気まずそうな顔で頭を掻く。謝罪を口にしようとする銀時さんの言葉を遮り、聞かれて困ることではないと弁解してからゆっくりと口を開いた。

「旦那は、総太が生まれる前に亡くなりました。でも、今も彼は私の中で生きていますから」

 なるべく明るくそう言うと銀時さんだけでなく総悟もホッとしたような顔をしていた。心配してくれていたのが伝わってきて胸が温かくなり、自然と笑みが浮かぶ。

121130
次のページ#
目次/しおりを挟む
[top]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -