07

 数年ぶりに会った近藤さんは相変わらずで、他愛のない談笑に花を咲かせた。そんな近藤さんとの会話を遮ったのは爆音とともに現れた総悟で、久しぶりの弟との再会に顔がほころぶ。

「久しぶりです、姉ちゃん」
「ええ、久しぶり。元気そうね」
「はい、この通りです!」
「ふふ、総悟と会えて嬉しいわ。……あ、そうだ、総悟にも彼を紹介しておくわね」

 私の影に隠れていた総太の背中を押すと、総太は恥ずかしそうに身じろいで私の腕に抱きつく。

「総太、きちんと挨拶しないと駄目でしょう」
「…………総太です。ども」

 頭を下げた総太を褒めてやると、彼は嬉しそうに笑う。天使のようなその笑みに顔が緩み、そっと抱き締めると総太の腕が首に回る。

「あの、姉上……そのガキは?」

 ふてくされたような声を出す総悟に私の息子だと紹介すると、総悟は暫く固まった後この世の終わりだという顔をして部屋を飛び出していってしまった。
 そんなに驚くことだろうかと目を丸くしていると、ハッハッと近藤さんが楽しそうに笑う。

「総悟は相変わらず姉離れができてないな」
「姉離れしてしまったら、寂しいわ」
「ヘンリー殿のような素敵な方が姉では、姉離れなんてできんでしょうな」
「ふふ、お上手ですね」

 近藤さんと顔を合わせて笑っていると総太がつまらなそうな顔をして私の手を引く。見知らぬ人ばかりの中、唯一気軽に話せる私に放置されて寂しかったのだろう。総太の脇に手を差し込み膝に座らせると、総太は腰に腕を回し強く抱きついてきた。

 栗色の髪も青い瞳も私そっくりな総太は、尖った目尻以外土方さんに似たところはなく、私が言わなければ彼との子どもだなんて誰も思わないだろう。
 本当は彼らに迷惑をかけたくなかったが、身寄りのない私には彼らしか頼れる人がいない。だから――

「近藤さん、無理を言ってごめんなさい」
「困ったときはお互い様さ。総太くんのことは俺らに任せて、ヘンリー殿は療養に力を入れて、早く総太くんを迎えに来てやってくれ」

 包み込むような表情で、近藤さんが言う。それに頷くことができず曖昧に笑って総太の背中を押す。

「総太、いい子にするのよ」
「はい……母上」
「そんな顔をしないで。決心が揺らいでしまうわ」

 困り顔でそう言うと、総太はさらに顔を歪める。それを見た近藤さんは総太に近寄り脇に手を差し込む。総太を抱き上げた近藤さんは、私に視線だけ寄越す。

「総太くんの面倒は見てるから、総悟と街を歩いてきたらどうだ? きちんと、説明してやらんと」
「……はい。ありがとうございます」

 近藤さんの計らいで今日一日休みになった総悟と一緒に街に出た。

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