05 過保護になった総悟を道場に送り出してから洗濯物をしていると、土方さんがやってきた。以前より胸の高まりはおさまっていて、笑顔で挨拶をすることに成功した私は「総悟は道場に行きましたよ」と言い、それに軽く頷いた土方さんは一歩私に近づく。 「アイツは警察に届けておいた」 「総悟から聞きました。ありがとうございます。それと、迷惑をかけて申し訳ありませんでした」 「いや、……大丈夫か?」 「? はい、すっかり元気です」 そう言ってもう一度笑ってみせると、土方さんは難しい顔をし、次いで私の頬に手を添えた。 「無理をするな」 「……していません」 「先輩が心配をしていた。あれから姉上が笑わなくなった、と」 「……、」 思わず息を呑むと、土方さんが私に顔を近づけてくる。 顔に熱が集まるのを感じた時、額に鈍い痛みが走った。頭突きをされたのだと理解した途端目尻に涙が浮かんできて、頭突きとは思えないほどの痛さに悶えていると、ふわり、と優しく包み込むように抱き締められる。破裂してしまいそうなほど心臓が強く脈打ち、先ほどとは違う意味で涙が零れる。 「辛いならそう言え。……俺じゃあ頼りないか?」 「いいえ、そんなことありません。少しだけ、このままでいさせてください」 やり場のない手をどうするべきか悩み、土方さんの着物の裾を掴む。広い胸に顔を埋めて目を閉じると溢れるほどの幸福を感じた。――私、土方さんが好きなんだ。その時実感した感情は、土方さんに近づくなと懇願してきた総悟に対する裏切りなのかもしれないが、それでもこの想いを自分に隠すことはできなさそうだった。 121120 次のページ# 目次/しおりを挟む [top] |