04 城に到着した私たちを出迎えたのは、お父様と武装をした兵士たちだった。城を抜け出したことはとっくにバレていたらしく気まずい思いでお父様の様子をうかがっていると、少しだけ眉を下げたお父様が兵に命令を下す。「リャンを、処刑せよ」…………は? お父様の言ったことが理解できずにいる私をよそに兵士がリャンを取り囲み武器を向ける。いったいなにをしているのだと止めに入ろうとする私を引き止めたのはお父様で、残念そうな表情で首を振る。 「一国の王女を連れ出した罪は許されるものではない。法に基づき、リャンを死刑に処する」 「え……は……なにを言っているの? リャンを連れ出したのは私よ。リャンに非はないわ」 「ヘンリー、リャンは奴隷だ。ヘンリーの希望で彼には鎖をつけてはいないが、奴隷であることには変わらない。奴隷が王女を城から抜け出すのを手伝ったのだから……」 「手伝ってない! 私は自分の力だけで抜け出したのよ!」 「だが、リャンがヘンリーを止めることができなかったのもまた事実。それを国王として見過ごすわけにはいかん」 「リャンが私を止めることなんてできない! だからリャンは私についていき私を守るのが最善だと判断して……」 「ヘンリー。……気持ちはわかるが、もう決まったことだ」 背中を向けるお父様に何度訴えても決定が覆ることはなく、リャンに視線を向けると彼は全てを受け入れるかのように目を伏せていた。なんなの、この状況は。こんなの、おかしい。 リャンは私の奴隷だけれど、私の一番の理解者でもあった。奴隷なんて名ばかりで、私の一番大切な人だ。 「どうしても、殺すというのね?」 「処罰だ。……いい加減聞き分けなさい」 「リャンが今まで私にどれほど尽くしてくれたか……殺されそうになっているのに、見捨てるわけにはいかない」 兵に囲まれているリャンに近づこうとすると、鋭い一喝が飛んでくる。 「ならん! もし邪魔をすると言うなら、お前も国の反逆者とみなす。……ヘンリー、代わりの奴隷をすぐに買ってやる。我慢しなさい」 「代わりなんていないわっ」 地面を蹴って飛び上がり、兵の真ん中に着地する。軽い音を立てて降り立った私を見て戸惑う兵士を無視してリャンに向き合う。 「なに勝手に死を受け入れてるの? 私の許しなしに死ねるなんて思っているのかしら」 「……そうですね。ヘンリーさまは許可していないことをされるのが大嫌いですから」 「よくわかってるじゃない。……リャン、私はこの国に失望したわ」 服の首元につっかけておいた眼鏡を装着してリャンに命令を下す。そこでようやく我に返った兵士がリャンに向かって槍を突き立てるも、それはリャンに掠ることすらなく避けられ、リャンは次々に兵士をなぎ倒していく。私が加勢するまでもなく全ては終わってしまい、地に伏せる兵士を眺めていると、いつの間にか背後にお父様がいて小刀を向けられていた。小刀が私を切りつける前にリャンがお父様に手を下す。この瞬間、私たちは間違いなく反逆者となった。 120710 次のページ# 目次/しおりを挟む [top] |