よん 練習試合終了後。 我先にと部室を飛び出してきた部員に何かあったのかと目を向けると、競争するかのように私の元へ走ってきた。右からも左からも掛けられる戸惑っていると隣に来た幸村くんがその場を纏める。 「俺も一緒に帰っていいか」 幸村くんと帰ると言った途端に文句を言い出した周りを押し退けてそう尋ねてきた柳に続くように「俺も!」「俺も!」と言うので皆で一緒に帰ることになった。大勢の男子、それもイケメンの中に女一人……いやだな。 「マネージャーも呼ぼうか?」 まるで私の心を見透かしたかのような幸村くんの言葉に驚くも、有り難い申し出を断る理由もなく九人のマネージャーを交えて帰ることになった。 「初めてテニスの試合を見たけど、凄かった」 隣に居る幸村くんに声を掛けたつもりだったのだが「本当ですか!?」「また見せてやるよ」「初めてなのか? なら今度テニスの解説してやるよ」と別の人から反応されたことに驚いてただただ相槌を打つ。 マネージャーさんはマネージャーさん同士で話が盛り上がっているみたいで話し掛けずらく、テニス部の人たちに話し掛けられる度に身を小さくしていると新マネージャーさんが助け船を出してくれた。 「そんなに一度に話し掛けてもわからないわよ」 「あ、そうだな、悪い」 「つい夢中になっちまって」 口々に謝罪する彼らは、根はいい人なのだろう。なぜここまで私に構うのかわからないが、もしかしたら幸村くんの気持ちを知っていてお節介しようとしているのかもしれない。 「腹減ったー」 「俺もー。どっか寄っていかない?」 「いいね! パフェ食べたい。」 丸井くんと、それに便乗した金髪の少年、さらに短髪のマネージャーさんが「腹ペコー!」と声を揃えるのでファミレスに寄ることになった。 120817 次のページ# 目次/しおりを挟む [top] |