さん

 一週間後。
 幸村くんに練習試合を見に来ないかと誘われ、休日の学校に訪れた。私は二年が始まった頃に部活を退部したので、休みの日の学校は久しぶりだ。なんだかドキドキする。
 テニスコートの近くまで来てみるとフェンスを囲うように凄い数のギャラリーが居て驚いた。これでは試合が見れないではないか。跡部さまーっと叫んでいる女の子が着ている制服は立海のものではないが、対戦相手の学校の生徒だろうか。

「工藤さん!」

 こんなにたくさんの人の中からよく見付けられたなあと感心しつつこちらに近付いて来る幸村くんに手を振ると、彼はとても嬉しそうにするものだからなんだか恥ずかしくなって手を下ろした。日の光を浴びて只でさえ眩しいというのに、さらに幸村くんの輝かしい笑顔を直視してしまい思わず目を逸らすと、今度は悲しそうな顔をしだすものだから慌てる。

「あのっ、幸村くんがあまりにも眩しかったから……!」
「眩しい?」
「え、あ……あのっ、ちがっ、」
「フフッ、そっか。今日は来てくれて、ありがとう」
「う、うん」
「そこからじゃよく見えないでしょ、中のベンチに座りなよ」

 部員や監督のためのベンチを指差す幸村くんに首を傾げる。部外者があのベンチに座ることを許されるのだろうか? というか、もしいいのだとしても注目を浴びるだろうテニスコートの中になど入りたくない。それを掻い摘んで伝えると酷く動揺した様子の幸村くんは腕を組んで悩み出す。

「幸村くん、誰その子?」
「彼女なん? 随分親しそうやけど」

 赤毛が特徴の丸井くんと、立海のものではない水色のユニホームを着た関西弁さん、他にも何人もの人がフェンス越しに集まってきた。「可愛い子だね」「氷帝に転校してこいよ」「俺、鳳長太郎っていいます!」「プリッ」「立海にこんな奴居たんだな」次々と投げ掛けられる言葉に困惑しているといつの間にかフェンスを越えてきた泣き黒子さんにお付き合いを申し込まれた。いよいよ収集がつかなくなったところでやって来たのはこの前マネージャーになった美少女。仁王くんの腕に己の腕を絡ませて「練習しないと!」と言っている彼女は流石マネージャー、真面目さんだ。
 そんなマネージャーさんの腕を、仁王くんは乱暴に振り払う。機嫌が悪いのかと思いきやとろけてしまいそうなほど甘い笑みを浮かべている仁王くんに戸惑う。ほっぺたに手を添えられて視線を合わせさせられたときには驚きすぎて心臓が止まるかと思った。

「名前、なんていうん? 中に入って来て応援してくれんか、お前さんが近くに居てくれたら頑張れるナリ」

 歯の浮くような台詞に顔が赤くなるのを感じつつマネージャーさんの言うように練習をきちんとした方がいいのではと言うと皆は張り切った様子コートへと入って行った。残されたマネージャーさんがじいっと私を見ていたがすぐに業務に戻っていった、睨まれたような気がしたが何かしてしまっただろうか。

120805
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