念能力 ゴンとキルアに付き合い天空闘技場を訪れた私は、通帳に振り込まれている莫大な金額に目を白黒させていた。今までお金の管理は全部先生任せで小銭くらいしか持ったことはなく、おかしな桁数のお金を完全に持て余している。 せっかく稼いだんだから少しは好きなことに使えよと言う、ボンボンのキルアのアドバイスにより、美味しいと評判のクレープを売っている屋台で一番高いスペシャルクレープを購入すると「それがヘンリーの贅沢?」と哀れむような視線を向けられた。 「ずっと食べてみたかったんだもの」 「まあ、ヘンリーがいいならいいけど」 「おいしい?」 「うん、おいしいよ。ゴンも一口食べる?」 「ありがとう!」 ゴンの一口が予想より大きくて少し涙が出たが、噂のクレープは評判以上に美味しく、全てを食べ終わる頃にはすっかり私のお気に入りになっていた。今度先生にも買ってあげよう。 「そういやヘンリー、燃って知ってるか?」 「ねん?」 「まあヘンリーが知るわけない……」 「知ってるよ」 「…………は?」 「本当? 俺たちウイングさんに燃について教えてもらったんだけど、なんか納得できないんだよね」 間抜けに口を開けるキルアと期待のこもった目を向けるゴン。念に対する説明を求められたので自分の知っている知識を話したのだが上手く伝わらなかったのか「やっぱ知らないんじゃねーか」とキルアに一蹴りされてしまう。なんとか念を教えようとしたのだがキルアは取り合ってくれず「やっぱウイングさんにもう一度聞きにいこうぜ」とゴンと話し合っている。 「そういえば、次は二百階だね」 「ま、俺らなら余裕だろ」 自信満々で二百階の受け付けに向かうキルアだが、怪しげなオーラを放つ人物を前にし足を止める。顔にピエロのようなペイントを施しているその人物はヒソカで、ニタリと不気味に笑う彼はキルアたちの行く手を阻む。それでも無理をして進もうとするキルアとゴンを止めたのは、一人の男性だった。見覚えのない男性は、二人の知り合いらしい。 結局私たちは二百階の受け付けをするはせずにその男性――ウイングさんの家にお邪魔することになった。 「では、本当の念を説明しましょう」 本当とはなんだと思ったが、おとなしく事の成り行きを見守っているとウイングさんに名指しされる。「ヘンリーさんは念を使えますね」という問いかけに頷くとキルアが大袈裟に驚き、ゴンとズシが尊敬の眼差しを私に向けてきた。(ズシはウイングさんの弟子であり、ゴンとキルアの友達でもあるらしい) 念に対する講義を受けたゴンとキルアはそれから熱心に念の修行を始めた。そして、念をまあまあできるようになった頃、そろそろ水見式で系統を調べようとウイングさんが提案する。 「ゴンは強化系、キルアは変化系ね」 「ヘンリーはなんの系統なの?」 「私は操作系よ。ズシと一緒」 コップの横に手を添えて練をすると水の上に浮かぶ木の葉が魚のように泳ぎ出す。へえ、と関心したような声を出すみんなに得意になって、さらに練を強く粘り気のあるものにすると、コップの中から水が消えてしまった。(強く粘り気が、というのは私の中でのイメージであり、実際に粘り気があるわけではない) 「……特質系も混ざっているのですか?」 「力が入ったときだけ、なるんです。でも特質系より操作系の方が得意です」 「なるほど。もう発は完成していますか?」 「はい。先生と話し合って決めました」 「それなら私が口出しすることはなさそうですね」 完璧です、と手を叩くウイングさんにつられるかのようにゴンとズシも拍手しているが、キルアだけは私が念を使ったことを疑うようにコップを睨みつけていた。 130205 次のページ# 目次/しおりを挟む [top] |