試験場までの道のり

 嵐に直撃するという船に残ったのは私以外に三人いて、そのうちの一人は私を助けてくれた人だった。美女だと思っていた人が実は男の人であると知ったときはとても衝撃を受けたが、確かに胸がない。こんな綺麗な男の人もいるのだと見惚れていると、大きな声で名前を呼ばれる。

「は、はひ!」
「お前さんの目的は?」
「も、目的?」
「ああ、ハンター試験を受ける目的さ」
「わ、私は……先生にハンター証があると便利だって言われたので。あと、自分の実力を知りたいというのもあります」
「ほう……じゃあ俺が試してやろう」

 ニヤリと笑う船長さんの言葉に首を傾げるも、戦闘の合図だと気づいた私は構えをとる。「不思議な構えだな」という船長さんから視線を外さずに足を踏み込み先手をとるべく走り出す。――否、走り出そうとしたところで船長さんがガッハッハと笑い出した。

「冗談だよ、冗談」
「冗談……本気にしちゃった」
「まあ、あえて言うなら覚悟を試したのさ。俺と戦う勇気があるのかをね」
「戦いは得意だよ。誰にも負けない自信ある」

 表情を緩めて笑う私とは対照的に船長さんは少し顔を強張らせる。今の発言は失敗だったかもしれないと口を押さえて謝るとわしわしと頭を撫で回された。

「謝るこたあねえさ。お嬢ちゃんの気迫に俺が負けただけだ」

 さあ次はアンタの目的を聞こうか、とクラピカに声をかける船長さんは本当に気にしてないようで安心する。私とクラピカ以外に船に残った二人、レオリオとゴンに視線を向けると目があった。軽くお辞儀をするとレオリオは気持ち程度に片手を挙げ、ゴンはニコッと子どもらしく笑う。
 もっと怖い人がたくさんいると思っていたが、彼ら三人のように優しそうな人もいるのだと安堵し、義務感だけで受けたこの試験が少しだけ楽しみになった。

120705
次のページ#
目次/しおりを挟む
[top]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -