「ごめんください」
道場の入り口にお琴は立っていた。
「こんにちは」
「あら、千歳ちゃん…こんにちは」
お琴はふわりと微笑む。
初めてお琴と会ってから4年もの月日が流れていた。
「えっとトシ呼んできますね」
「ありがとうね」
パタパタと走り土方を呼びに行く。
「また来たのか…?」
部屋に呼びに行きその理由を告げれば土方はしかめっ面をした。
「もう…将来のお嫁さんなんだからそんな事言わないの」
この台詞を言うのは何度目になるだろうか。
言う度に胸がちくっと痛む。
「はぁ…しゃーねぇな」
頭をポリポリかきながら土方は立ち上がり部屋を出た。
「……っはぁ…」
「そんなにお琴さんに会って欲しくないなら土方さんに言えば?」
いつの間にか障子の横に自分と同じ顔の総司が立っていた。
「別に言う理由なんてないもん」
「僕は…土方さんはどうでも良いけど大切な妹が苦しむ姿は見たくないんだよね」
「別に苦しんでないよ、総司」
顔に笑みを張り付けさせ総司の横を通り抜ける。
「苦しんでるから言ってるんじゃないか」
誰もいなくなった部屋で総司は壁にこぶしをバンと叩きつけた。